こんにちは、おっこちゃんです。

 

電通による過労死の事件は、いよいよ本格的な捜査に入ったようですね。

 

でも、おっこちゃんには、あたかも推理小説のストーリーのように、初めに別の犯人で落ち着きを見せて、真犯人が別にいるような、なにかもやもやとした違和感があります。

 

それは、過労死の温床となった企業風土を醸成したものとして、鬼十則があり、これが電通での過労死を引き起こしたという点についてです。つまり、鬼十則が犯人となっている点です。

 

鬼十則とは、以下の通りです。そしてここでは書きませんが、象徴的なこととして指摘しておきたいのは、裏十則という替え歌みたいなバージョンがあり、鬼十則と反対のことを言っているものがある点です。

 

仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。

 

一読しての僕の感想としては、いいこと言っているなと思います。ここで、問題の過労死に直結しかねない表現としては、「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。」「八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ」 ぐらいかと思います。

 

逆に小さな仕事はおのれを小さくするとか、仕事は自ら創るとか、先手先手と働きかけていくとかについては、むしろ無意味な残業をすべきでないとも読めます。

 

この鬼十則は、4代目社長吉田秀雄によって1951年につくられたということですから、戦後まもなくの時代背景や当時の会社規模の違いなどは当然あるだろうと思いますが、それを度外視しても、今でもビジネスマンとしては、通じるものがあると思います。

 

ただ、この鬼十則には、温かみがありません。十則という性質からそうなのでしょうが、これを見る限りでは行動規範そのものなので、なんとも言えません。

 

僕が興味があるのは、こうした行動規範を立て、組織が大きくなり、かつエリートが入社するような日本のいい学校、いい大学、いい企業へのコースの達成者が入るような会社となったときに、この行動規範が、厳しい企業風土を醸成してしまうのではないかという点にあります。

 

今、多くの若い世代には一般的に精神論は通じないとされています。昔のように床の間に正座をさせて説教をするお父さんも皆無になり、逆に精神的に大人でないお父さんを多く輩出し、DVが問題となっています。

 

しかし他方で、こうした日本を代表する企業が、かなりドメスティックな職場環境であるなどと関係した人でなければわからないことです。

 

結局は電通のみならず、日本の多くの企業で、こうした職場環境はあると思うべきです。

 

しかも電通は、今回の高橋まつりさんの過労による自殺ばかりでなく、過去にも同様の事件を起こしています。

 

1991年8月。電通に入社して2年目のの男性社員が自宅で自殺した。奇しくも高橋まつりさんと同じ24歳だった。25年も前の事件です。

 

この裁判は2000年3月、最高裁で電通に安全配慮義務違反があったと認定された。「長時間の業務で疲労が蓄積すると、労働者の心身の健康を損なう危険のあることは周知のところだ」「会社は労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務がある」。

 

こうした判例が出されてから16年、しかも、2014年6月に関西支社が、2015年8月には東京・汐留の本社が、違法な長時間労働をさせたとして労働基準監督署から是正勧告を受けていたにもかかわらず、高橋まつりさんの事件は起きてしまいました。

 

僕は、自分もそうですが、どうしても周囲との調和を重視するあまり、会社がもし残業を奨励するような風土であったのであれば、残業をしてしまうような弱さを自分のなかにも感じます。

 

その時に現れるのが、この鬼十則なのであれば、いくら鬼十則がいいことを言っていたとしても、撤廃すべきなのでないかと考えています。

 

丁度、戦後に天皇を象徴としての存在としたように、根底から変えなければ、この企業風土は変わらないだろうと思うわけです。

 

日本人の有給休暇の取得率だとか、労働時間の長さだとかが、海外と比較しても圧倒的に悪い状態にあるのは確かです。

 

それと労働基準法ほど、企業に無視された法律を僕は知りません。

 

法律よりも藩則だとか会社の規則だとか鬼十則だとかが、より強く守るべきものとして意識されているからだろうと思います。

 

以上から僕の結論としては、鬼十則そのものが悪いわけではないし、原因そのものではないけれども、残業が奨励されるような企業風土の旗印として、鬼十則があるのであれば、撤廃すべきだということになります。

 

お読みいただき、ありがとうございました。

 

20161108 by okkochaan