先日ヤフーニュースで流れた17年間、派遣社員として勤務された58歳の2児のシングルマザーが2018年問題の影響で雇い止めになったことについて、思うところを書こうと思います。

 

 

この記事は、「3カ月更新の契約で17年勤務…そして、突然の「雇い止め」 58歳派遣社員の思いは」という印象的なタイトルです。

 

しかし、これへの思うところを書くとなると、いろんな視点から書くことが可能となり、収取がつかなくなりそうです。

 

今回はこの記事から直接的に感じた点を中心に書こうと思います。

 

さて、一見、単純に見えるこの出来事は、ある意味では、現代の日本の労働を考える上での重大な問題を含んでいます。

 

まず、日本の労働市場の特異な歴史について、ざっくりと見渡し、その結果の一つの表れである2018年問題について書こうと思います。

 

また派遣社員の雇い止めとか、2018年問題とは何かということについては、丁寧に書かれた記事がありますので、それについては、最後に参考記事として紹介します。

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【派遣社員が労働市場にもたらしたもの】

 

日本で人材派遣法が施行されたのは1986年ですから、30年ぐらいしかたっていない新しい制度ですが、労働者の年齢という見方にたてば、むしろ働き盛りの年代の方々にとっては、当たり前にある制度と見えなくもないはずです。

 

この法律の名前にしても、非常に長い正式名称があるのですが、何度も法律の改正が行われてきましたが、自民党政権下にあっては、基本的な流れとしては規制緩和であり、民主党政権の時のみ制限がきつくなったりしていますが、全体的には規制緩和であり、非正規雇用者というあたらな雇用者を多数生み出しました。

 

しかし、派遣できる職種については、厳しく制限してのスタートであり、高度な専門性をもった職種に限るとしていましたが、実態がともなわない面も多々あるのと、「派遣社員=プロフェッショナル」という位置づけの確立よりも、オフィス内の雑用とかお茶出し、簡単な事務などを中心にまかせたいという会社側のニーズの方が強く、このために、スキルが秀でている派遣社員たちというよりも、事務とかOA機器操作に慣れている頼みやすい人が好まれる傾向がありました。

 

 

*この点ですが、国会で議論されている年収一千万以上の専門職とかを残業時間での管理をしないという方向の「残業ゼロ法案」などについては、十分注意する必要があると考えます。すなわち、派遣法が当初、派遣対象の職種を高度な専門性をもったものに限るとしながら、徐々になし崩し的に、港湾業務や警備業務など別な法律で管理されている職種を除き、実質的にどのような職種でも派遣可能となった経緯をよく考える必要があると思います。

 

 

人材派遣とは、労働法の見地からいえば、雇用主と使用者(指揮命令者)を切り離したものとなります。

 

 

簡単にいうと、業務を指揮する人が給与の支払い者(雇い主)ではなく、派遣先の企業となるわけです。

 

 

しかし、本来、帰属意識が強い日本人にとって、この派遣のシステムは本当に定着したでしょうか。

 

 

本来、専門性の高い職種に限るとしていたものが、もちろんすべてではありませんが、実際のニーズとしては一般事務とか単純なデータ入力とかが高く、つまり、現在ではAIにとって代わろうとしている業務がほとんどであり、また派遣社員としての権利の主張にしても、スキル的な背景がないぶんだけ力が弱くなったように見えます。

 

 

つまり、ドクターXのような資格とスキルだけで自由に生きるということは、一般的にはきれいごとでしかなく、一方で核家族化が進み、シングルマザーも増えてきながら必ずしも経済的地盤がそれにともなっていないで進んでしまったのが日本の労働者社会の悲劇であるように思います。

 

 

ここは、詳しく書くとながくなるので、いったんこのくらいにして、結果として出てきたものは、安い労働力の供給と、正社員へのストレス強化といえるのではないでしょうか。

 

 

特に日本の場合に顕著なのは、本来、短期的な正社員の代替であるべき派遣社員が常用雇用型となんら変わらない仕事を安い賃金で行ってくれるために、派遣社員をはじめ非正規雇用者の割合が急速に増大してしまった点です。

 

 

もちろん、派遣社員のなかには一定の割合で、正社員以上の仕事をこなす人がいますが、そうした方は比較的短期でやめてしまうか企業がほおっておかず正社員として雇用したりするので、割合としては少なくなります。

 

 

結局、ほとんどの企業において、派遣社員の扱いについては、これまでなじみ深かったパートタイマーとさして変わらない位置づけであるといっていいと思います。

 

 

今回の58歳のシングルマザーの派遣社員の方の悲劇は、こうした背景があったものであり、似たような境遇にある派遣社員の方は相当数いらっしゃると思われます。

 

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【直接的な原因である2018年問題】

 

今回の女性の場合、直接的な雇い止めの原因は2018年問題であるといわれています。

 

それは、改正労働契約法が施行された2013年4月1日以降に有期労働契約を締結・更新した場合、5年後の2018年4月1日から労働者は以下の条件を満たすことにより、有期雇用契約を無期雇用契約とすることができます。

 

① 「同一の使用者」との間に有期契約の通算期間が5年を超える場合
② 労働者が使用者に対して無期契約への転換を申し込んだ場合

 

ただし、この改正労働契約法が施行されたあとに、企業によっては、内規によって契約社員の通算期間を最長3年とするなど、この2018年問題を避けるための方策を早々ととったりしていました。

 

また外資系企業などでは、グローバルな規定として契約社員(派遣社員を含む)の最長期間を1年までと定めたりしています。

 

 

こうした取り決めは外資系企業がほとんどですが、もともと長期の派遣雇用の考えがないために、改正労働契約法も2015年の派遣法改正による同一派遣社員の最長3年の規定も問題になりませんでした。

 

 

では、どういった企業が深刻な問題になったかというと、パートタイマーと変わりなく派遣社員を利用していた企業であり、その仕事の内容が、作業的なものでありながらも、人海戦術的にこなさなければならず、企業の生命線でもあるような業務であるような場合です。

 

 

例えば保険会社の事務とかコールセンターとか、銀行業務とか、AIに将来的には可能性を見出しつつも、現状のデイリーワークをこなさなければならないような業務が該当すると思います。

 

 

こうした企業において、かなりの割合で無期雇用が進んでいますが、パートタイマーであれ雇用主が派遣会社である派遣社員であれ、業務遂行のために、人材確保が優先される仕事についての対応は進んでいるように見えます。

 

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【派遣社員はどうすればいいのか】

 

今回の58歳の女性の記事への反応は、どちらかというと冷ややかにも感じるようなドライなものが多かったように思います。

 

いろんな資格をとりながらも22万の給与であることから、現状とか市場価値をしっかり判断すべきだったとか、派遣社員はいつ切られてもしかたがないのだから、企業や派遣会社を恨むのは筋違いだとかいったものです。

 

それは、もちろん間違ってはいないのですが、大きく見逃している点があるように僕は思います。

 

1.日本の非正規雇用者は守られていない点

 

詳しくはありませんが、特にイギリスなどと比較すると、イギリスでは派遣であっても法律によって守られているために、日本のように不安定な形にはならないし、働いていて不安を感じなかったという事を数人から聞いたことがあります。

 

その点、日本の法整備は労働者保護という見地から、かなり遅れていると言わざるを得ません。

 

 

2.派遣で働き続けるリスクに対してのアドバイスがない点

 

総じて派遣という働き方への理解がないこと、その理由の一部にはもちろん一般事務的な派遣システムの利用がメインになってしまったという事情があるのですが、長い期間、派遣で働くのは正社員と比較すると収入面でも不利です。

 

本来、雇用の継続という点では、不安定であるはずなのに、人間は慣れてしまう動物なので、長い間、問題なく更新されていくと、そのことを忘れてしまいます。

 

しかし、確実にあるリスクに対して、誰もアドバイスする人がいません。

 

なぜなら、派遣会社にとっても企業にとっても、その方は都合のよい存在で、そのままいて欲しいという状況がたまたまずっと続いていたからです。

 

僕は、だからといって、その方が自覚をもって主体的・能動的に生きるべきだなどとは思いません。

 

もちろん、そうできればいいとは思いますが、この記事の方にしても、二人のお子様をたった一人で育てるだけでも十分に社会に還元する仕事をしていると言えないでしょうか。

 

仕事は人生の部分にすぎませんが、それが死活問題にもなり得てしまう状況に置かれているという意味では、派遣社員に限らず、日本の労働者は不利に思えます。

 

 

【雇い止めの法理】

 

本質的な解決ではありませんが、今回のケースについて言えば、可能性として【雇い止めの法理】が適用になるかもしれません。

 

① 過去に反復更新された有期契約で、その雇い止めが無期契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの

② 労働者において、有期契約の契約期間の満了時にその有期契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められるもの

 

今回のケースを見る限りですが、①について可能性があるのではないでしょうか。

 

なにしろ、17年間、3か月更新で反復継続して雇用されていたわけですから。

 

記事に11月に組合に入ったように書かれていたように思いますが、そうなると雇い止めの予感もあったと思われます。

 

ただ、解決金のような形で組合には多額のお金を支払うことになると思いますが、どのようなやめ方であったにせよ、17年間、その企業や派遣会社から仕事の提供を受けていたということもまた事実なので、今後のためにも、その点については、逆恨みのような形にならないことを、その方のために僕は願っています。

 

ただ、しつこいですが、日本の労働者は世界レベルでみても、過酷な状況に置かれており、守られていないと思います。

 

 

参考記事:

雇い止め・派遣切り大量発生! 2018年問題と改正労働契約法・派遣法

派遣・契約社員の2018年問題

 

 

201712221 by okkochaan