ヤフーニュースによれば、四国電力の50代の営業部長が40名ほどの懇親会のあと、タクシーが来ていないという理由で担当社員3名を殴り、うち1人のかたは鼓膜が破れるという大けがを負ったとのこと。

 

これに対し、四国電力は1日付で営業部長職を解き、出勤停止2カ月の懲戒処分としたとのことですが、ネット上ではこの部長が過去にも同様の事件で厳重注意を受けており、「初犯」ではないこともあり、処分が甘すぎるという声が多数でています。

 

【事件の背景を想像してみた】

 

四国電力に限らず、東日本大震災では東京電力でしたが、世間的な受け止めではまずつぶれる心配のない大企業で、年収もそこそこあり、エリートコースで入る会社です。

 

この部長は50代で営業畑ということなので、バブル期を若いころに味わっていて、接待をするのもされるのも慣れていた可能性は高いです。

 

今やっと電力会社の選択もできる仕組みができつつありますが、少なくとも就職されたころには、電力会社は独占的に販売ができていたはずだし、原発には夢も可能性もあり、普通に勤めていれば標準以上のレベルの人生を約束されていました。

 

しかし、東日本大震災以降に風向きが変わったはずですが、大会社の社内から見る世間というものは、決して広くはなく、部長どまりだとしても、まずサラリーマンとしては成功した部類にはいり、風向きの変化など気にしないという社内的な風潮がまだまだあると思います。

 

一度しみついた価値観を変えることは容易なことではなく、この営業部長も部下は厳しく育てなければならない、なぜなら、厳しくしなければなめられるし、そもそもやつらは何にもわからないのだからそれを指導するのが部長として当然のことであり、多少の暴力が入っても問題ないと考えていた可能性は高いです。

 

ハラスメントについては、「細かいことを小うるさくいっている」ぐらいの認識であり、ハラスメントがなぜいけないと考えられるのかという本質的な認識にいたることはなく、ただ暴力であれば暴行とか傷害で警察沙汰になってまずいので、やらないという以上の認識ではありません。

 

そうなると、過去の厳重注意の内容が気になります。

 

お役所的な辞令と同じ程度の「厳重注意に処す」という紙ぺら一枚の注意に近いものであったのであれば、当人も「ちょっと具合悪いことになっちゃって」と笑ってごまかすぐらいの事であったかもしれません。

 

ふだんは真面目できっちりしているし、人情味もあったりし、付き合いも悪くないのですが、ちょっと意にそわないことがあるとキツイ叱責があるので、部下もあまり近寄らず、当たらず触らずの接し方をしているので、決してよい信頼関係では結ばれていません。

 

むしろ逆鱗にふれて殴られたら割があわないので、敬遠されているのです。

 

ただ、本人は部下は叱って育てるという信念をもっています。

 

また自分と対等以上の人に対しては丁寧で感じもよかったりするので、上司からは悪い点が見えずらくなっています。

 

【なぜ警察に言わない?】

 

この事件が発生したのは10月の半ばで約1か月前のことです。

 

そして処分は11月1日の10日前、ことが明るみにでたのは11月10日ということなので、四国電力の世間の評判を落とすこの事件をなんとか穏便に処理したいということはわかります。

 

決して営業部長をかばったわけではないでしょう。

 

それにしても、殴られたのは3人、鼓膜がやぶれた方が対抗できなかったのは仕方がないにしても、あと2人はなんとかできなかったのでしょうか。

 

ひとこと、「部長、これは明らかに限度を超えた暴力行為です」と言えなかったのでしょうか。

 

見ず知らずの暴漢ではないので、すぐに警察を呼ばないことはわかるのですが、3対一だし、相手は50代なのです。

 

それができないのが、サラリーマンの悲しいところでしょうか?

 

過労死の問題とか、その他のハラスメントにしても、僕はこのあたりが日本の会社社会に蔓延している病巣であると思い、暗い気持ちになります。

 

一人一人がちょっとだけ勇気をもって、ごまかさず立ち向かっていくこと、言うのは簡単ですが難しい面があることは僕個人の経験からもわかります。

 

しかし、周囲も自分の問題として、声をあげていかなければ、こうしたハラスメントに対する無理解はなくならないだろうと思います。

 

今回は暴力というビジュアル的にわかりやすい事例ですが、暗黙の実質的な残業強制であったり、マタハラであったり、明示的に言葉ででないハラスメントは無数に存在しているのではないでしょうか。

 

また今回、大企業という点からいえば、弱い人ほど権威的になる傾向があります。

 

そんな人を部長にしてはいけないので、人事的な評価項目のなかに、大企業病にかかっていないかというものを追加すべきだと思います。

 

20171111 by okkochaan