ヤフーニュースによりますと、北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの母、早紀江さんと父、滋さんが神奈川新聞のインタビューで拉致問題の解決の糸口も見いだせない政府への不信感とともに、北朝鮮に最後の力を振り絞ってでも行き、金正恩に返してくださいと言いたいと話したそうです。

 

 

「心身共に、活動はもう難しい。40年も過ぎた今が一番苦しい」。1977年、新潟市内で北朝鮮に拉致された横田めぐみさん=失踪当時(13)=の母早紀江さん(81)=川崎市川崎区=は6日、神奈川新聞社のインタビューに応じ、時間と体力の限界を吐露した。父滋さん(85)も同席。

 

拉致問題については、いくつか記事を書いていますが、めぐみさんが拉致されてからすでに40年の月日が流れています。

 

2002年に拉致被害者が5人帰国してから、この問題は一歩も進まず、当時の小泉首相と同行した安倍晋三(官房副長官)が首相となり、被害者の家族会の期待に残念ながら安倍首相は全く応えられていません。

 

「政府の本気度が見えないことが北朝鮮には伝わる。本来なら首相が乗り込んででも解決すべき問題なのに」

 

これは人間の付き合いとして考えてみても、その通りだと思います。

 

しかし、安倍晋三氏はこの拉致問題をきっかけとして政治家として昇りつめ総理大臣となりました。

 

毎年、「拉致問題の解決こそが自分の使命」といったようなことを言っていますが、言行一致とは到底いいがたい状況です。

 

また40年もたっているということは、今30代以下の方にとっては、生まれる前の出来事なのです。

 

時は残酷な面があります。その30代以下の方々が、拉致問題に感情移入できないのは、無理もない面があります。

 

しかし、これは無知からくることなので、その方々も人の親にでもなれば、わかることかもしれません。

 

だから、わからないのに、死ぬ覚悟で北朝鮮に行ってお願いしたいといっている横田夫妻を批判することはできないので、余計な発言はなさらないほうが無難です。

 

ただ、家族会の方々はトランプ大統領に対しては、好意的な見方をされています。

 

横田早紀江さんは、アメリカの大統領には3人会っていますが、トランプ氏が一人一人と握手するさまや熱心に話を聞く様子をみて、「非常に人間的な人だと思った」と会見後に語っています。

 

同時に「トランプ氏に戦争は絶対にやめて欲しい」と言えなかったのが残念だとおっしゃっています。

 

早紀江さんは、時間がなかったことを理由にあげていますが、一説には発言をとめられたという話もあります。

 
横田早紀江さんがトランプ大統領に「戦争しないで」と伝えたい意思を明らかにするも、安倍応援団が発言封じ込め

 

 

【拉致問題について感じるのは<不作為の作為>】

 

拉致問題について、関係者以外の日本人は、そもそも無関心か、もしくは<不作為の作為>の負い目を感じているのではないかと僕は考えます。

 

梶井基次郎という小説家が、故郷で親族が死んでいくのを皆が見守っている様子を「虫が弱っていき死んでいくのを見守っているようだ」という風に書いています。(言葉は正確ではありませんが、意味は正しいと思います。)

 

この拉致問題の家族会の方々の運動に対しての、一般国民の置かれた状況は、若干の意味合いの違いはあるのですが、状況的にはこれに近いものがあるのではないでしょうか。

 

そもそも拉致被害にあわなかったのは、偶然にすぎません。

 

被害に遭う確率は低く、そんな低確率の被害にあったのは、奇病にかかるとか、たまたま乗った飛行機が墜落したのと同じで、「かわいそう。でも私でなくて良かった。」ということです。

 

ただ、拉致問題の場合は交渉によって解決できる可能性が十分にあることです。

 

だから決して不運だとかではあきらめきれないのです。

 

横田さんばかりでなく、被害者の会の方々は精力的に活動してきています。

 

また蓮池透さんは、拉致被害者の蓮池薫さんのお兄さんですが、2010年に家族会からの脱退を宣告されてしまいました。

 

家族会は北朝鮮への圧力路線を支持していて、蓮池さんは対話重視なわけですが、僕は個人的には対話重視を言っている蓮池さんを否定できないし、家族会の決定は間違っていたのではないかと考えています。

 

つまり、その後、圧力路線では何ひとつ進まなかったのです。

 

 

【はっきりした横田めぐみさんが金正恩の母であるという説の間違い】

 

話を面白くするためでしょうが、横田早紀江さんが皇室と李王朝双方の血をひいているから、その子供である横田めぐみさんを拉致したというのは、今回の早紀江さんの話からだけでも間違いであることが、はっきりしたと思います。

 

仮に、めぐみさんが金正恩の母であるならば、金正恩は早紀江さんの孫であり、もっと前に早紀江さんに会いに行けたであろうからです。

 

また孫である正恩が核開発でこれだけ国際社会から非難され、戦争の危機がせまっているのに、それに対しても活動しないということは、早紀江さんの性格からも、この追い詰められた状況からも考えられません。

 

ただ、こうした話に支持の気持ちを持つのも、話が面白いからということばかりではなく、無意識に<不作為の作為>への負い目があるように思えてなりません。

 

 

【最後に】

 

戦争が複雑な要因や利権がからんでいることは理解できますが、拉致問題に関しては、こうした無慈悲にある日突然、「行ってきます」と出かけた子供が帰ってこなかったらどうなのかというところに立ち返って考えて欲しいと思います。

 

まして横田さんの場合は、それが拉致であることがわかるまで、20年を要しているのです。

 

そして、途中、5人の被害者が帰国しましたが、めぐみさんは帰らずさらに20年、滋さんもすでに85歳におなりで、健康状態もあまりよくありません。

 

また最近、金賢姫さんが、めぐみさんが生きていること、帰れない理由は、めぐみさんが工作員教育に関わったことと、「公開しては困る秘密を知ってしまったからだ」だとし、「一番は金正日(キム・ジョンイル)一家との関わりだ」との見方を示しています。

 

こうなってくると、どう考えても、横田一家の再会がなければ、この話、終わるわけにはいかないと思います。

 

拉致問題は、すべての日本人にとって重要な問題だと思っています。

 

日本政府は、相手がミサイルを飛ばしていることとは関係なく、日本としての主張と交渉、お願いを貫き続けるべきだと考えます。

 

関連記事:

横田めぐみさんの母は皇族ではない

拉致問題の解決交渉こそが北朝鮮のミサイルを止められるのではないか

 

20171207 by okkochaan