派遣営業のトラブルログの第4回は、外人パブにスタッフを仕入に行った話です。
僕は、外国人の派遣をけっこうやったのですが、これから外国人労働者はますます増えるのは間違いありません。
この領域に強くなることは、将来的に大きなアドバンテージを持てると思います。
ちなみに、現在の派遣労働者の数と外国人労働者の数はほぼ同数の130万人です。
法改正により外国人労働者はさらに増えますが、問題になっていたタコ部屋的な仕事ではなく、しっかりと生活も身分も保証された労働環境を派遣会社としても取り組むべき時ではないでしょうか。
ピュアな英語を話す外国人の派遣依頼
ある時、クライアントの大手証券会社の国際部から外国人の派遣依頼がありました。
言葉は何をやるにしても重要で、その証券会社にとっても、英語が通じればよいという話ではなく、海外の投資家の心を刺すにはネイティブ以上のレベルの英語力がどうしても欲しかったのです。
そのため、派遣して欲しいスタッフへの要望は高いものがありました。
・英米圏の人であること
・日本語が出来ないこと
この2つが絶対条件なのですが、困ったのは2番目の日本語が出来ないことという条件です。
クライアントの担当者は東大出身の方でしたが、日本語が片言でもできるとピュアな英語でなくなると強く思い込んでいて、この条件は絶対でした。
この案件は、派遣しているイギリス人の後任です。
そのイギリス人の男性は日本に10年住んでいるのですが、日本語はほとんどできませんでした。
身長は160センチぐらいの小柄な方でしたが、友達もいなくてとても孤独な人でした。
ちなみにイギリスに帰っても友達なんていないそうで、国籍とかでもなく、彼固有の問題だと思います。
顔つきはどうみてもイギリス人だし、日本の女性にもてるだろうと思って聞いてみると、全然もてずガールフレンドすらいたことがないそうです。
どこかの出版社で英文の校正のような仕事をしてた人で、典型的なネクラ人間でした。
貧乏ぐらしをしていてアパートに住み、カップヌードルを食べて生活していました。
「〇〇さん、外国人だっていろいろなんですよ」と彼は英語で話します。
彼には有給休暇の仕組みとか社会保険のことを英語で説明したのですが、なかなか理解してもらえず、そのおかげで僕の英語力がアップしたりしました。
その彼が、どこかの出版社でいい条件の仕事が見つかったらしく派遣契約を更新しないで辞めるための後任さがしでした。
彼に誰か紹介してもらえないかと頼みましたが、なにせ友達がいない孤独な人なので、誰も知らないとのことでした。
そもそも、日本で仕事を探そうとしている外国人は、日本が好きだから来ている場合がほとんどで、日本語が全くわからない人を探すのは困難です。
日本にいるだけで、自然に日本語は入ってくるわけだし、親ばかで娘を男に触れさせないように深窓に隔離するのと同じような環境でもなければ無理です。
もちろん、海外から招へいするという手はありますが、ビザの手配のみならず住居のこと日本での生活のケア、旅費の負担、それに何よりも時間がかかることから、この選択肢はありませんでした。
僕は困りはてて、日本人と結婚していて日本語が並みの日本人より上手なぐらいのアメリカ人に、日本語が全くできないふりをしてくれと頼みこみ、先方に紹介しましたが、それも失敗しました。
言葉はともかく、彼は日本の習慣を知り過ぎているので、日本風におじぎをしてしまったのが敗因というか、日本語を理解しているのを感じてしまったようです。
僕には打つ手がなくなりました。
ただ、僕には妙な信念があって、問題が煮詰まってきて、本当にどうにもならなくなると、予想外の方向から、突然なにかのヒラメキとかラッキーとかが起こることを信じていました。
いざ外人パブへ
この窮地を救ってくれたのは、僕の尊敬する上司でした。
彼に状況を話すと、彼はその場で、「今夜空いてるか?」と言います。
彼はもともと自営で商売をしていたので、実にいろんなことを知っていました。
彼の話だと、横浜の外人パブに行けば、その問題は解決するだろうとのことでした。
そのパブは、外国人の情報交換の場になっていて、日本に来たばかりの外国人も初めに行くところだそうです。
当然、仕事を探している外国人がたくさん集まっているとのことでした。
そして僕は上司とともに、横浜の外人パブに向かったのでした。
パブは熱気にあふれ、椅子はなくて小さなテーブルがいくつかあり、客は全員、外国人でした。
スーツ姿の僕と上司は、どうみても場違いで浮いていますが、それを気にしている場合ではありません。
二手にわかれて、客に声をかけまくり、自分はリクルーターであり、外国人を雇用する企業の案件を多数もっているので、よかったらレジメを送って欲しいと言って名刺を配りまくりました。
途中、店側からあまり派手にやらないでくれと言われましたが、気にせず続け、30分ほどで名刺100枚は配って退散しました。
バラエティーに富んだ英文レジメ
それから3日ぐらいの間で、10通以上の英文レジメが送られてきました。
僕はそれまで多少は英文レジメをみてきましたが、送られてきたレジメは、僕がこれまで見たこともないド派手なデザインのものとか、内容がすごいものが多く、自分の知見の狭さを思い知りました。
今でも覚えているものをひとつ紹介すると、こんな感じの内容が書かれていたものがありました。
ヘイ、俺の部屋がいかに仕事向けに作られているか紹介するぜ。
俺の部屋は会社をイメージして、徹底して機能的に作られているんだ。
スチール製の机にデスクトップのパソコン、そしてビジネス情報は各種の新聞とインターネット、ラジオから入ってくる。
俺は、9時に自分の部屋に出勤して、5時の定時まで、その部屋で働いているんだ。
こうして、限りなく自分の部屋を会社の環境と同じようにしているので、俺はいつでも、どんな仕事にでも対応できる体制をとっているんだぜ。
考えてみると、僕は日本社会をある程度理解している外国人としか付き合ってきませんでした。
こうした強いアピールが普通である社会を始めて垣間見た思いでした。
僕はそのなかで、もっとも今回の仕事に適していると思われる3人について、個人情報を完全に消したうえで、クライアントに打診してみました。
担当者がメンタルを病んで案件は消滅
ところが、担当者からはなかなか返事がありません。
これまで毎日のように催促があったので変だと思い確認してみると、なんと、担当者は復帰予定が未定の休みに入っているとのことでした。
その後、その会社の情報通に聞いてみたところ、どうやらメンタルをやられての休職のようでした。
確かにその東大出身の担当は、普通にコミュニケーションをとるのが難しいところがある、かなり変わった方でしたので、結果論ですが、メンタルの病気での休職は、いかにもありそうなことでした。
そして彼の休職とともに、その案件も消滅してしまいました。
結果的に、この案件には、かなりの労力を注いだのですが実りませんでした。
しかし、僕は非常に多くの事をこの案件を通じて学べたと思っています。
特に、スタッフがいない場合、直接仕入れに行くという、尊敬する上司の仕事に取り組む姿勢から、僕は人材派遣の原点に立ち返ることができたと思っています。
その後、キャラバン隊を組んで、団地などでの出張登録会をするという発想もこの出来事から生まれたものです。
ごちょーないのみなさま。毎度ありがとうございます。
人材派遣の〇〇でございます。
本日は、出張登録会ということで、やって参りました。
現在、一日5時間で週三日勤務で簡単に良い条件では働ける案件など多数そろえております。
お気軽にお立ち寄りいただき、どんな仕事があるかだけでもご覧ください。云々。
僕の脳裏には、その尊敬する上司が、リンゴ売りよろしくキャラバンに乗り込んで、スタッフを集めている姿が浮かんできます。
彼は実際に、それをやったことがないはずですが、イメージとしてしみついているのです。
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20190206 by okkochaan