派遣の職場見学をなくし効率的な仕事をする方法
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ここでは、直前の記事の続編として、派遣の職場見学をなくすことにより、3者(派遣先、派遣元、スタッフ)すべてに納得できるであろう具体的なプランについて語ります。

 

ちなみに、直前の記事は以下になりますが、それを読んでいないから理解できないということはありません。

人材派遣での顔合わせはなぜなくならないのか

 

またこの方法は現役時代の私が全部ではなくとも実行し、企業の理解が得られない場合でも、常にめざしながら行っていた方法でもあります。

 

方法は非常に単純ですが、効果は絶大であり、派遣先が実行にためらったとしても、どのような問題が実際にあるのかを具体的に示すことにより信頼を勝ち得ることができるので決して無駄にはなりません。

 

では、さっそくいってみます。

 

Third Day’s Check法とは

私の命名ですが、Third Day’s Checkとは、派遣3日目に派遣先およびスタッフにヒアリングをし、派遣状況をチェックすることです。

 

これは、決して詳細な状況確認ではなく、簡単にいうと大丈夫かどうかのチェックをするという程度のことになります。

 

このThird Day’s Check法を実行するには、派遣に先立って、企業との人材派遣契約をできれば覚書など書面で確認をしておきます。

 

その覚書には、以下の内容を盛り込んでおくとよいでしょう。

 

1.職場見学はスタッフの強い要望がないかぎり行わないこと。

2.派遣先は仕事内容を可能な範囲で明らかにすること。ただし職場環境のうち人員構成など流動的な部分は仕事内容には含めない。

3.初回の契約は5営業日とし、この期間はトライアル期間として、別途、派遣料金を設定することが可能であること。

4.派遣先は派遣会社より仕事に関係のある事項が記載されたキャリアやスキルなどが確認できるシートを事前に受け取ることができるが、その内容から紹介されたスタッフが仕事内容をこなすのにあきらかな不足が見当たらない場合は、すみやかに派遣契約を交わすこと。

5.この覚書は30日以内の単発派遣の禁止に抵触しない条件をみたすスタッフもしくは職種に限定すること。

6.派遣したスタッフの8日目以降の契約については、派遣3日目が終了した時点で派遣先およびスタッフの意向が合致した場合のみ更新すること。

 

上記をくだいて説明します。

 

まず派遣の職場見学は原則ないわけですが、スタッフがどうしても事前に訪問したいという場合については、派遣会社の判断のうえで職場見学を行なうこととします。(職場見学は、Webによる派遣先企業の案内や電話会談を含みます。)

 

ただし、この方法の趣旨としては、職場見学という無駄な時間を費やさないところにあり、そのために初回を1週間の契約としているので、派遣会社からスタッフに理解を求める必要はあるでしょう。

 

もし、職場見学をした場合、不適当な質問が派遣先からでてしまう可能性は強くあり、この職場見学をなくすという狙いが無駄になってしまうからです。

 

実際には、派遣当初の3日間をつかって、必要なオリエンテーションをするなどすれば十分なので、職場見学は不要なのです。

 

仕事内容は、日本式の募集要項のような定型的なスタイルよりも、欧米の会社のようなJob Descriptionで、文章によって仕事内容を明らかにする方法が良いと思います。

 

ここでのポイントはこの5日間の派遣料金を低く設定し、トライアルが終了した6日目からと2段階の設定をあらかじめしておくことです。

 

3日目のヒアリングで本契約である6日目以降の派遣料金を決めることはせず、あらかじめ決めておき、企業および派遣スタッフはそこを基準に判断すればよいのです。

 

ここに流動性をもたせると、派遣先は当初の3日間で派遣スタッフの仕事能力に応じた時間単価を決めるようなこともあり得るので、絶対にさけなければなりません。

 

また特に規定をしませんが、初めから派遣料金を固定しておいても問題はなく、またトライアル終了時に派遣初日にさかのぼって契約料金を上方に修正するのはアリだと思います。

 

現在の派遣法では、30日以内の単発派遣は日雇い派遣ともいい、例外を除いて原則禁止されていますので、それに対しての配慮も必要です。

 

ここでは、詳述しませんが、60歳以上のスタッフ、学生、主たる収入が500万以上ある方が副業としてやる場合、世帯収入が500万円以上あり、なおかつ世帯主でない場合、翻訳、調査、研究、OAファイリングなどを始めとする特殊な職種(旧政令26業務)などがそれにあたります。

 

ただ実務的なことを考えると、専門性の高い特殊な業務にしぼったほうがよいと考えます。

 

念のため初回の契約書には、「長期見込み派遣のトライアル期間」と記述し、専門性を要することがうかがえる業務内容を契約書に記述しておけば足りるのではないかと思います。

 

クレイム発生を激減させる効果

このThird Day’s Check法には、クレイム発生を激減させる効果があります。

 

クレイムは実際のところ、あらゆる方向からあり得るのですが、よくあるクレイムのほとんどはこの方法で防げるからです。

 

これについて」、個別に考えられるクレイムについて書きます。

 

派遣先からのクレイム

派遣スタッフのスキル不足による支払い拒否:派遣スタッフのスキルが不足していたりして派遣先が料金の支払いを拒否、もしくは減額を求めるケースがあります。この場合でありえることを想定したうえでの当初5日間の低額料金への設定であるのでクレイムは生じにくいと考えられます。

 

派遣スタッフが1日か2日でやめてしまった:上記と同様ですが、このトライアル期間について理由のいかんを問わずスタッフがやめた場合も、働いた時間に応じた支払いをしてもらいます。

 

スタッフの定着率(トライアルから本契約への更新)が低い:
これは、職場見学をしないことが原因ではなく、派遣先の仕事内容についての派遣会社の理解度の差のあらわれです。定着率が低い派遣会社については、依頼を一時中止するなど、派遣先に依頼の選択権が与えられます。

 

スタッフからのクレイム

トライアル期間中はいつでもやめていいのですか?:はい、問題ありません。当然ですが、その場合は派遣会社に対して理由とともにやめる意志を明確に伝えてください。

トライアル期間でやめると次の仕事がこないのでは?:理由による判断は派遣会社にありますが、同様の理由で希望でない職場への仕事紹介は今後はないように派遣会社は努力します。

同じ仕事なのにトライアル期間の時給が低いのは納得できない:あなたが仕事を探しながら無駄に待つことがないように、トライアル期間を設定し、すぐに働けるように取り組んでいます。多少時間給が下がっても、すぐに働くことのほうが意味があると考えられませんか?

他の仕事を平行して探してもいいですか?:問題ありません。ただしトライアル後に本契約に入った場合は、契約期間は守ってください。

 

以上、簡単ですが、総じて、このThird Day’s Check法を使うことにより、派遣先、派遣元、スタッフのストレスはかなり減少するはずです。

 

またそれぞれが、派遣のあり方について職場見学などするよりも、見直す機会が増え、なんどもくりかえすことにより、派遣会社の人選精度はあがり、派遣先のスタッフ受け入れの体制は強化し、スタッフのプロ意識は向上します。

 

この例えがあっているかどうかわかりませんが、見合い結婚の方が、恋愛結婚よりも離婚率は低いというデータもあります。

 

人材派遣の仕事も固定的に当たり前にあるのでは決してなく、派遣先、派遣元、スタッフ、それぞれの努力があって初めて良い仕事ができるものだということを肝に銘じていただければと存じます。

 

在宅勤務も当たり前になった現在は、私が現役で営業していたころよりも、職場見学なしの派遣は現実的になっているに違いないと確信しています。

 

日本には、「下手な考え休むに似たり」という言葉がありますが、私が強く言いたいのは、「職場見学は休みに似たり」ということなのです。

 

お互いの貴重な時間を決して無駄にしてはならないと思います。

 

以上、多少でも参考になれば幸いです。

 

20210216 by okkochaan