接客 ハラスメント 問題
Photo by Christiann Koepke on Unsplash

接客はサービス業であれば必ずある要素だが、そこでのハラスメントはカスタマーハラスメントと呼ばれている。

 

略してカスハラだが、ハラスメントの数もすでに30を超えているので10以上言える人も多いのではないだろうか。

 

それでもハラスメントをしてしまう側に立つと、かなり無自覚な方がいるのが現状である。

 

特に代表的なセクハラの場合、相手が嫌がっているのに勝手に好意ととらえてしまう場合もあるので始末が悪い。

 

だが、少しでも自分の言動に注意し、相手を思いやる心があれば多くの場合はハラスメントにならないとも思う。

 

ここでは、最近、カスハラといわれている接客業における顧客からのハラスメントを取りあげてみる。

 

大声でどなるとか暴力をふるうなど、外見的にもわかりやすいモンスタークレーマーのケースばかりではなく、もっと微妙で同僚などにも相談するかどうかためらうぐらいの場合についても書いてみたい。

 

なぜかというと、そうした微妙なケースは、普通に数多く存在するし、これらの集積が社会全体を殺伐なものとしていると考えるからである。

 

微妙なケースの場合、人に相談せずに自分で処理してしまう場合が多いだろうけれども、言葉にしてみることで、接客でのハラスメントの問題を実在させ、それによって対処法も明らかにしたいと思っている。

 

一見良い人から受けると苦痛は4倍

僕にとっては、これが一番嫌でやっかいなケースであると同時に、最も興味あることでもある。

 

一見良い人、つまり外見も普通もしくはそれ以上で優しそうで常識も備わっているように見える人からハラスメントを受けた場合、その心の傷は治りずらい。

 

おまけに、このケースの場合、ハラスメントの加害者にも被害者にもなり得るという事もある。

 

これは、ある程度相手を知っていたり、二、三度あっていて上客であったり、社会的地位も高かったりし、本人は意図的に出さないが自分は尊敬されてしかるべきだと考えているような場合、たとえば先生のような場合とかである。

 

あなたも相手についてそのように認識していて、いつも通りにこやかに対応していたのに、ふとした小さなこととか不用意な言葉とかで思いもかけず相手の本性が見えてしまったように感じる場合だが、具体的にイメージしずらいかもしれない。

 

たとえば、明らかに相手を下に見るような言葉や金を払っているのは自分だという態度とか、いつもは紳士的なのについ出てしまった言動とかである。

 

この場合、ハラスメントの苦痛は通常の4倍にはなると思う。

 

裏切られた気持ち X 人に相談できない = 4

となる。

 

このケースはハラスメントをしているという自覚がない場合がほとんどなのも問題を難しくしている。

 

そしてハラスメントを受けた側も、自分が我慢すればいいだけだと考えるだろう。

 

だが、僕はこの問題にもっとも注目する。

 

それは、ハラスメント全体の分母というか土壌になっているように思えるからだ。

 

ハラスメント全体に共通しているのは、相手に対する敬意の欠如だが、裏切られた思いと人に相談できない苦しみは、一見、小さな悩みに思えるかもしれないが、いつまでも尾を引き、決して忘れない出来事になり得るのだ。

 

もし経営者の方が、接客が向いていないという理由で辞めてしまう社員を少なくしたいならば、こうした微妙な問題であることが多いことをぜひ知って欲しい。

 

それを適性(向いていないとか)で割り切るか、教育とかマニュアルとかAIの導入とかでカバーするかというのは経営判断になるだろう。

 

力関係で対応が変わる奴は馬鹿と思え

接客業では、簡単に言えば「俺は客だぞ!」というのを全開にして上から迫ってくるケース。

 

そのくせ同等かそれ以上の人間に対しては、丁寧で紳士的であったりする。

 

こうした人は人間関係の重要な部分は、力関係とか上下関係であると考えている。

 

だから接客する店員とかに対して横柄になるのである。

 

単純な馬鹿といってもいいし、それ以上でもそれ以下でもない、ただそれだけの存在である。

 

こうした人は、仕事を離れたりすると何をしていいかわからず、自分が何が不満なのかもわからず、ただ相手を威嚇したり大声をあげたりしか出来なくなる。

 

不安であり、自分の存在理由を古い価値観に頼って確認しようとあがいている。

 

そのように、可哀そうな人なのだが、そこまで相手のことを考えてあげる必要など全くない。

 

絶滅危惧種に近いおろかな人なので、本人の自覚以外に救いはないからだ。

 

もし相手のことを考えてあげるのならば、しっかりと容赦なく悪い点とその理由を相手に逃げ場所を与えずに話す覚悟でやろう。

 

DV野郎はクズだが、奥さんや子供を優先して考えるべし

DVをする人間の場合も、前記の力関係による態度の変化と同じ構造だ。

 

基本的に、甘やかされて育った家庭環境があり、同時に力のある人(たとえば父親)から同じような扱いを受けている。

 

そして友情とか愛情とかとは無縁に生きている。

 

DVの場合、一見優しくスイッチが入ると豹変し自分では止められないので、接客的には判断しずらいだろう。

 

突然、甘えるような口調で、「えー、やってくれないの?」とか「なんでだめなの?」とかに理不尽にこだわる場合はDV野郎である場合が多い気がする。

 

もし奥さんや子供が近くにいた場合はその様子を観察すればわかることはある。

 

奧さんや子供がおびえていたり、必要以上に旦那に気を使っているはずだ。

 

ちょっとハラスメントの話からそれるが、DVの場合、特にかわいそうなのは子供である。

 

奥さんは、結婚前の交際期間である程度気がついている場合も多いと思う。

 

その場合、「私ならなんとか矯正することができる」と思ったとしたら自業自得の面がある。

 

しかし子供はそうではない。

 

DVではないが、しつけとして、子供の頭を小突いたりするのを日常的にやっている父親を目にすることがある。

 

この場合、僕は関係なくても、その父親に注意したくなる。

 

子供が本当にかわいそうだからだ。

 

このケースは、父親としっかり話すべきなので、知り合いであればぜひ勇気をもって実行して欲しいと思っている。

 

「少し言いにくいことなんですが、どうしても気になるのでおうかがいします。あなたは、先ほど〇〇ちゃん(子供の名前)の頭を叩いていましたが、いつもそんな風にしているのですか?」

 

という感じで、穏やかに始めればいいのではないだろうか。

 

なお、この会話は絶対に子供には聞かせない場所で行わなければならない。

 

「店長だせ!」はお笑いレベルだが笑ってはいけない

この「店長だせ!」の古典的なフレーズは、最近はかなり少なくなっていると思う。

 

若い世代には皆無に近いと思うので、シニア以上の世代がほとんどではないだろうか。

 

僕の場合、いかに相手が激高していても、このセリフを聞くと、笑いをこらえることに一苦労する。

 

「おっ、出たな!」と思ってしまうからで、怒っている人を応援してやりたいぐらいだ。

 

もちろん正当なクレイムの場合もあるとは思うが、それは相手と話しても埒が明かないために便宜的に言っている場合である。

 

しかし、その場合は、「店長だせ!」と意気込むことは少なく、「すみませんがこの問題がわかる方とお話しできませんか」とか落ち着いた話し方をするか直接カスタマーサービスなどに電話するとかするだろう。

 

また、会社なら「上司を出せ」だろうが、金品目的である場合は芝居として理解できる。

 

つまりお金を動かす決裁権がある人を求めているだけだからである。

 

金品目的でなければ、自分の怒りの感情のはけ口として、より偉い人と対等に話すという自己満足でしかない。

 

そして、「俺はめったにこんなことを言ったりしないんだ」とか言って、自分の怒りを正当化しようとし、何度も「店長出せ!」と言っていることとか力関係で強いものに巻かれますということを白状している。

 

求めているのは正当なクレームでないかぎりは、予定調和的な和解なので、バカバカしいが笑いをかみ殺して速やかに上司なり店長なりにつなげばよい。

 

ちなみに、外国人の場合は決してそんなことは言わない。

 

あくまでも接客をしているあなたと話そうとしているので、あくまで個人対個人なのである。

 

この場合は、出来る限り対応して自分の権限以上のことであれば、そのことを理解してもらった上で店長につなぐべきである。

 

モンスタークレイマーは猛獣だと思え

職業的ではなくクレイムそのものを生きがいとしているような人をモンスタークレイマーと言う。

 

これの対処法は相手を猛獣だと思う事である。

 

猛獣の特徴としては、相手が強いこと、会話が成り立たないこと、相手がいかなる攻撃をかけてくるか予想できないことなどである。

 

モンスタークレイマーは猛獣と思えば、どんなひどい言葉でもあなたが傷つくことはないが、時間の浪費が一番痛いので、時間の無駄が少ない良い猛獣使いになれるように場数を踏むしかない。

 

実際にフィジカルに危害を加えられる恐れがあれば即110番である。

 

ただし忘れてはいけない基本

最後に誤解がないように、基本的な対応について書いておきたい。

 

いわずもがなの事かもしれないが、ハラスメントありきで書いていた本稿について補完したいからである。

 

相手の言っている内容をよく聞きクレイムかハラスメントかを判断する

初動捜査を誤ると、すべてが間違った方向にいってしまうと同様に、相手が何者かを規定し判断することは重要だ。

 

相手の感情が高ぶっているからといって、それにシンクロしていては正確な判断ができない。

 

まずは、相手の言っている内容をよく聞き、確認するために相手の言っていることを復唱し確認しよう。

 

サービス側が悪い正当なクレイムの場合もあるし、それは相手が多少感情的になり失礼な言動をしたとしても、クレイム自体としては価値がある場合があるからだ。

 

へたに下手にでないこと

まずは理由はどうであれ、お詫びをすることは基本中の基本である。

 

しかし、これは必ずしも下手に出ることを意味しない。

 

特にクレイマーとかハラスメントとかの場合は、下手にでることは逆効果だと認識しよう。

 

対応に年齢や経験は関係ない

あなたが若く、経験も浅いという理由で対応に自信がなかったとしても、それは全く理由にはならない。

 

若くて経験も浅かったとしても、しっかりした対応をすることで、相手がひるむのである。

 

それは、言葉だけとは限らず、相手の目をしっかり見て話すとか、いささかも動じない態度とかで示すことができる。

 

念のためだが、これはあなたが気が強くなれと言っているのではない。

 

あなたが気が弱くても別に構わないが、それを表に出さないスキルは必要だと言っている。

 

僕自身のことで恐縮だが、僕はどちらかというと、怖いもの知らずのなんでもOKな人間とよく見られていたが、事実はまったく逆である。

 

それは、酒に弱く、スプーン2杯の酒で簡単に酔ってしまうのに酒好きと思われていたのと同じだ。

 

自分ほど気が弱く、不安症ではないかといつも思っていることを、僕の数少ない友人はよく知っている。

 

この記事でも、一見良い人から受けると苦痛は4倍という事を真っ先に書いていることから推察していただければと思う。

 

反論や言い訳は相手をあおるだけ

顧客対応マニュアルがある会社であれば、反論とか言い訳をしないように書いてあるはずだ。

 

これは決して企業の押し付けではなく、心理学に基づいた合理的な解決法なのである。

 

「でも」とか「ですから」とかで始まる反論は、相手が待ってましたとばかり飛びつくような言葉である。

 

こうした言葉は相手をあおるばかりか、そうした言葉で自分の怒りを増幅したいと待ち構えていると考えよう。

 

定型的な反論は、相手の得意なフィールドに自分から飛び込んでいくようなものなのである。

 

これに対し、「すみません」「せっかくご来店いただいたのに不愉快な気持ちにさせてしまい、申し訳ございません」とかで始める意図は相手の得意フィールドを外し、こちらがわのペースに引き込むという明確な目的があるのだ。

 

こうした言葉で相手の機先を制し、その後の戦いを有利に導くことを自然にできるようになろう。

 

 

20191012 by okkochaan