TERA Energy

お坊さんが電気の販売を始めるという面白いニュースが入ってきました。

 

会社名はTERA Energy株式会社というわかりやすい名前です。

 

この活動はとてもユニークで興味深いのですが、一方で危うさというかもやっとした気持ちを感じたのは僕だけでしょうか。

 

この記事は、そのTERA Enery株式会社に感じるもやもや感の正体に迫りたいと思って書きました。

 

TERA Energy株式会社のニュースの概要

ニュースによれば、京都の西本願寺の僧侶たとが来年から電力の小売り事業を始めるとのことです。

 

過疎化で寺の収益が厳しく新たな財源を確保する狙いで、檀家の多い中国地方をターゲットとし、中国電力より2%程度やすく電気を供給するとのこと。

 

僕の記憶ではソフトバンクの電気で1%なので、割引率は大きいと言えます。

 

会社概要は以下の通り。

 

社名:TERA Energy 株式会社
設立年月日:2018年6月11日(販売事業開始2019年1月)
本籍所在地:京都市下京区万寿寺中之町88
資本金:402万円
事業内容:社会貢献するお寺の支援
再生可能エネルギーを主体とした電力販売
HEMSサービス及び関連業務

事業内容の最後にあるHEMSですが、

Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)

の略で、家のエネルギーの管理システムのことです。

 

再生可能エネルギーを供給するということは、省エネについてのアドバイスが必須になりますので、そのサービスを加えているのでしょう。

 

危うさを感じる点

しかし、ニュースでは報じられていませんが、この事業、大丈夫なのでしょうか。

 

僕が危ういと考えるのは、以下の点です。

 

・ お坊さんが電気を売りに来たり、HEMSサービスでのアドバイスをしたりする姿が想像できない。

・ ホームページで販売開始予定がいまだに2019年1月(予定)となっている。

・ 行動指針に不安がある。
仏道に生きた近江商人の〈三方よし~売り手よし、買い手よし、世間よし〉に〈未来よし〉を加えた 〈四方よし〉の精神を大切にしますと書かれているのですが、電力の買い手が逆に不安を感じるのではないかと心配。)

・ 全体にビジネスとしてのとらえ方の甘さを感じる。

・ 一般的には「坊主丸儲け」と考えている人も多く、イメージとのギャップがある。

 

結局、一般受け狙いをしているとしか思えない方針だし、誰もが驚くというより、「あ、いいんじゃない」程度の反応しかないビジネスモデルなので、僕は収益を得るのは相当厳しいのではないかと思います。

 

ホームページを拝見すると、使命感とかよりも、ちょっと頭のいい人が考える程度のことでしかありません。

 

それに、本願寺といえば、親鸞上人の教えもどこえやら、東本願寺と西本願寺にわかれてずっと喧嘩をしてきたわけです。

 

これは宗教とは無縁な権力闘争です。

 

もっとも親鸞聖人は、「弟子を一人ももたない」と明言しているし、歎異抄という親鸞上人の教えと違うことを嘆く本もでていたわけで、根が深い問題だと思います。

 

今回の新事業も西本願寺の僧侶がつくったわけですが、これまでがこれまでだったので、どうにも信頼性が薄い気がします。

 

少なくとも、再生エネルギーを売るのであれば、その前段階で、原発廃止を力強く発言していくぐらいの強い姿勢は欲しい所です。

 

そうであれば、2%の割引がなくても買ってくれる人は多いと思います。

 

結局、お寺も苦しく、お坊さんも苦しくなってきたし、過疎化の問題やおそらく高齢化の問題など、今の日本社会のどこにでもある問題が顕在化しての結果なのだと思いますが、ビジネスプランが弱いと思います。

 

 

仏教の今後目指して欲しい点

それにしても、よく言われることですが、日本人ほど器用に宗教を使い分ける民族はいないのではないでしょうか。

 

お寺とかお坊さんの説教とかに接するのは、一番にはお葬式の時だし、次にお墓参りの時だと思います。

 

お墓をもって管理したことがある方はわかると思いますが、お寺によっては、理不尽と思えるようなお金を払わなければならなかったりします。

 

納得しての支払いではなく、義務としての経費なのです。

 

もちろん、故人を偲んでお線香をあげたり花を飾ったりすることはあると思いますが、一方で、お墓を守る人がいなくなり荒れてしまった立派なお墓も本当によくみかけます。

 

お葬式にしても、略式ですませる家もこれからますます増えるだろうし、価格競争はこれから激しくなるのではないかと思います。

 

これこそ、既成宗教である仏教がこれまで経験したことがないことかもしれません。

 

問題の本質は、過疎化だけの問題ではなく、家族構造とか生活スタイルの変化などで、お坊さんを受け入れる気持ちと形がなくなってきてしまったことにあります。

 

葬儀費用についても先取特権が法律で規定されていて、要するにとりっぱぐれがないわけですが、宗教法人としての税金の特例とかがこれから見直される可能性だってあります。

 

貧乏はするかもしれませんが、これまでのところ、かなり恵まれているのは誰もが認めるところではないでしょうか。

 

浄土真宗だけではないと思いますが、宗教は本当に危機的状況だと思います。

 

また僕はいつの時代でも、人間の悩みはつきないし、宗教がはたす役割はますます重要になっていると思っています。

 

必要なことは電力供給事業などではなく、仏教本来の姿をもう一度とりもどすことではないかと思います。

 

時代のせいにしてはいけないと思うし、親鸞上人だけでなく、鎌倉仏教のころの僧侶たちからもう一度真摯に学び、より良い世界にするために何をすべきかを考え実行していただければと心から思います。

 

20181016 by okkochaan