ハトの雛を保護して反省しました

僕は動物が好きなのですが、自分で飼う事ができないでいます。

 

子供のころには、親が定期的に転勤する仕事についていたので飼えなかったし、現在は、家に勉強のために通っている子供に動物アレルギーがあるために飼えません。

 

そうなると身近に生息する昆虫やトカゲ、そして鳥を観察するぐらいしかできないのです。

 

最近、僕のこの欲求不満が余計なおせっかいを生み、なんにもならなかった「事件」がありましたので、記録しておきます。

 

キジバトが遊びにきた

家の庭によく来るキジバトのつがいがいました。

 

いつも一緒にいるので、ハトというのは仲がいいんだなとなんとなくうらやましく思いながら観察していました。

 

オスとメスの違いはすぐにわかりました。

 

身体的な特徴というより、その個体から受ける印象がオスとメスは明らかに違います。

 

オスはやや体が大きく、活動的であり、対してメスは、やや小ぶりで性格も控えめでありオスの後について行くといった感じです。

 

そして、主にオスの方が熱心に小さな枝を加えては運んでいますので、これは巣をつくろうとしているのだとわかりました。

 

巣作りについて気づいたことですが、初めは、家の月桂樹のところに作ろうとしていました。

 

かなり出来上がりに近い状態にまで仕上げ、巣にメスらしき方が入っていたので、卵を産むかなと思っていたのですが、なぜか中断し、どこかに行ってしまいました。

 

それからしばらくの間は、ハトを見かけることが少なくなりましたが、ある日、僕の部屋の軒先に巣をつくっているの気づきました。

 

その場所は上にフェンスもあるので、雨は完全に防げます。

 

少し幅が狭いかなと思ったのですが、樹に巣をつくることと比較すると少し斜めなことが難点なくらいで、まずまずの巣ではないかと思いました。

 

巣の完成後には、小枝がたくさんしたに落ちていましたが、その後、小枝の落下は止まりました。

 

おそらく糞などで安定させているのだと思います。

 

なぜかオスが消えて母子家庭に

それからメスがずっと巣にいて卵を温めるようになりました。

 

しかし、なぜかオスの姿が見えません。

 

マンションに住んでいた時に追い払うためにさんざん苦労したドバトは、卵を温めるのも雛にエサをやるのも、完全に二羽の共同作業だったので、どうしたのかなと思っていました。

 

調べてみても、キジバトは夫婦仲がよくて、長く連れ添うと書いてあるのに、変です。

 

しかし、ごくたまにですが、オスが姿を現すこともありました。

 

ただ、同じオスなのかどうか確信がありません。

 

どうやらハトは一般的には夫婦仲が良いのですが、オスは意外と浮気性らしいので、他にメスがいるか掛け持ちなのか、もしかすると初めからこちらは浮気だったのかもしれません。

 

ともかく結果として、卵を産んであたためるのはメス一羽だけの仕事になりました。

 

そのメスは美しい女性らしいメスで、眼の周りが赤いので、僕は「アンズ」という名前を勝手につけました。

 

ずっと雛が孵らないと思っていた

しかし、日にちはうろ覚えですが、3週間ぐらいたっても、雛のピイピイ鳴く声が聞こえてきません。

 

母鳥である「アンズ」は、根気よく卵を温めていて、朝、自分の食事のために外出する以外は、巣にいます。

 

「これは卵は死んでいるのではないか、もしかすると想像妊娠で、無精卵ではないのか」と僕は考え始めました。

 

「アンズはオスにフラれたのを認めたくないという意地で、無精卵を温めている。それに第一、僕は卵を見ていないので、卵すらないのかもしれない」とまで考えました。

 

しかし、それらはすべて、愚かな僕の邪推にすぎませんでした。

 

ある日、すでに立派に毛が生えそろった雛が2羽いるのを発見しました。

 

これまで、ドバトの雛しか見ていなかったので、キジバトとの違いがわからなかったのですが、ドバトの雛は大きな声でピイピイうるさいぐらい鳴くのに対し、キジバトの雛は小さな声で鳴きます。

 

その思い込みのために、間違えたのです。

 

また母鳥との声でのコミュニケーションも互いに小さな声ですが、相互に完全に意思疎通が出来ています。

 

雛にエサをあげるタイミングもドバトに比べると少ない気がしますし、母鳥が巣に戻っても、気が狂ったようにピイピイ鳴いたりしません。

 

それにしても、母子家庭でアンズは大変だと思うのですが、忙しく立ち働いているという印象でもありません。

 

巣から落ちた2羽

キジバト

ある夕方、天戸を締めようとした時に、巣の下の植木のところに雛が1羽とまっていました。

 

まるでフクロウのように丸っこい体で、眼光は結構するどいです。

 

しかし、雛は明らかにまだ飛べません。

 

もしかするともう飛べると思って、先走ってしまったのかなと思いましたが、ここにはたまに猫もくるので、そうなったらおしまいです。

 

僕はさんざん迷いましたが、保護することにしました。

 

巣の近くにいるので、アンズも育児放棄をしていない限りは来るので、エサは大丈夫だとしても、猫にやられるのは防ぎたかったのです。

 

またもう一羽の姿も見えないのでちょっと探してみましたが、見つかりません。

 

こちらはあきらめ、明日の朝、再度捜索をすることにしました。

 

僕のスケベ心は成就しなかった

動物に対峙するというのは、ある意味、自分自身に向き合う事だと僕は思っているのですが、それをこのことに絡めていうと、こうなります。

 

ハトの雛が巣から落ちてきてしまった。保護しないと外敵にやられるとか飢え死にする可能性は高い。

 

こうした「事件」に対して、僕は本当に雛を助けたいとか可哀そうとか思って保護するのだろうか?という自問です。

 

もちろん、見て見ぬふりをするという選択肢もありました。

 

「僕は忙しいし、弱肉強食という自然の営みに対して、いかなる意味でも手を加えるべきではない」

 

というのが、手を出さないための大義名分です。

 

しかし、僕は第一忙しくなくて暇を持て余しているし、自然の営みとかいうけれども、当面の強敵であると思われる猫にしても、人間の保護のもとで繁栄しているので、「自然」とは違う気がします。

 

結局、動物が飼いたくて欲求不満になっている僕は、雛を手なずけて、手乗りハトにし、一方で野鳥を飼うのは法律で禁止されているので、慣れたお友達のハトが近くにいるといいなと思ったのです。

 

ちなみに、鳥獣保護管理法という法律をご存知ない方もいらっしゃると思うので、やってはいけないことを書いておきますね。

 

・許可なしで飼育すること

・卵を見つけたからといって除去してはいけないこと

 

違反に対しては、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金と、しっかり罰則規定もあります。

 

特に卵の除去など知らずにやってしまいそうなので、十分気を付けてください。

 

僕の場合は、卵を産んだら周囲の状況が許せば、雛が巣立った後に、また卵を産まないように封鎖することにしていました。

 

行政に依頼して除去を行うのは、こうした意味があるのです。

 

話が少しそれましたが、手なずけて利用しようという僕のスケベ心は完全に失敗しました。

 

僕は雛の捕獲前に、段ボールを用意し、そこに紙を小さく切って敷き詰めました。

 

それからエサが難しいなと思ったのですが、小麦ふすまという小麦の皮を粉末にしたものがあったので、これで練り餌を作ることにしました。

 

さらにエサやりのために、ストローの先を切って丸く加工したものを用意しました。

 

しかし、保護した雛はすでに羽ばたきぐらいはできる状態になっていて、僕に対して警戒心がありすぎ、羽を立てクチバシで突っついて僕を威嚇しようとします。

 

これでは、到底エサを受け入れてくれそうもありません。

 

僕はほどなく、あきらめました。

 

しばらくすると、雛は段ボールから出て、部屋のなかを移動し、正確に巣の下あたりにいました。

 

僕はこの雛の能力に驚嘆せざるを得ませんでした。

 

結局、段ボールを暗く覆うとおとなしくなりましたので、翌朝巣にもどすことにしました。

 

巣にもどしもう一羽も発見、アンズも朝きて一件落着

翌朝、巣の下をみたら何やらごそごそと音がするので、もう一羽も難なく発見しました。

 

昨夜保護した雛よりはだいぶ大人しい雛です。

 

ちなみにハトは2個卵を産んで、必ずオスメスの組み合わせらしいです。(これには驚きます)

 

僕は昨夜保護した方がオスで、朝発見したほうがメスであることを確信しました。

 

さて、2羽とも無事に巣に還すと、母鳥であるアンズがやってきました。

 

アンズが育児放棄しないかどうかが最後の不安だったのですが、ちゃんとエサをやっていましたので、これにて一件落着です。

 

僕の反省

こうしたほんのちょっとした出来事ではありましたが、いろいろと考えさせられました。

 

僕が思ったのは、なぜ雛の保護について意味をつけようとするのかということでした。

 

僕は、ツルゲーネフの猟人日記とか、井伏鱒二の屋根の上のサワンとかの小説に毒されすぎていて、動物に対する自分がどうかということを意識しすぎているに違いありません。

 

ですが、動物たちはそのような人間の勝手な思い込みとは無関係に生きているのです。

 

うまく言えないのですが、雛を守る母鳥の強い姿から人間の親子の情愛を考えたり、傷ついた鳥を保護して自然に帰っていく姿に友情めいたものを投影するということに、僕はどうしてもすっきりしないものを感じてしまいます。

 

畜生でさえこうした情があるのだから、ましてや人間は云々・・・というわけです。

 

僕は、実はそこにあるのは、親子の情愛とか友情とかを超えた、また個体の感情ではなく、より大きな力ではないかと考えています。

 

今回、保護した雛が本気で自分を守ろうとしている姿から、僕は自分の甘さを徹底的に思い知らされました。

 

僕はヒマかもしれないけど、雛やその他の動物は常に命のやり取りをしなければならない過酷な環境で生きていて、絶対にヒマではありません。

 

雛を保護して自己満足しようとしたり、ましてや手なずけようなどと、僕は実におこがましくよこしまな思いをいだいていたのだと思います。

 

その後、雛は2羽ともしばらく巣でおとなしくしていましたが、夕方になってみると一羽しかいませんでした。

 

まだ飛べないし、自分でエサを見つけたり食べたりできないのに大丈夫だろうかと再び思い、周囲を探してみましたが、見つかりませんでした。

 

結局、未熟な状態ではありますが、こうして巣を出ていく時期なのだと思うことにしました。

 

おそらく、ハトを人間より下位の生物ととらえる時点で、何かが間違っているのです。

 

鳥類はあのすぐれた動物である恐竜の子孫なわけだし、ハトについていえば、嗅覚、視覚ともにすぐれていて、人間の顔も覚えます。

 

こちらからハトの姿が見えなくても、ハトはしっかりとあなたの姿をとらえていると思った方がいいわけです。

 

またワシに襲われそうになった時など、150キロの速さで急降下する能力もあるのです。

 

帰巣本能を利用した伝書鳩の能力は信じがたい距離を飛びますが、いまでは、式典などで白いハトをたくさん放すぐらいしか使われなくなりました。

 

こんな宇宙人並みの能力をもった動物が身近にいるということに、僕はあらためて驚いたのでした。

 

追記

その後、雛は2羽とも巣を離れ、写真のように近くのキンモクセイの枝にとまっていました。(写真がそれです)

 

ハトは人間を恐れませんので、近づいても問題ありません。

 

しばらくすると、1羽が飛んでいきました。(もうすでに飛べるんだと驚きました!)

 

さらにもう一羽もどこかにいきました。

 

するとなぜかオスのハトと一緒に2羽で親鳥があらわれました。

 

卵の温めと巣立ちまでをメスだけでやって、巣だったら戻ってくるオスってずいぶんだなと思ったのですが、僕は勝手な判断はしません。

 

近くでかすかにピイピイという声が聞こえると、2羽は同時に飛び立って雛の方に向かっていきました。

 

この雛たちの巣立ちが早すぎるのかどうかは僕にはわかりません。

 

ただ、よくわかりませんが、ドバトは見た目は成鳥と同じ状態でも巣に残ってピイピイ甘えていたので、キジバトの方が野生に近い分、巣離れも早いのかもしれないと思っています。

 

いずれにせよ、これで僕がやろうとしたことは全くのおせっかいであるばかりでなく、ハトたちにとっても迷惑なことであったことがよくわかりました。

 

 

20190725 by okkochaan