電通の新入社員だった高橋まつりさんが過労死(自殺)した問題を受けて、
厚生労働省は26日、違法な長時間労働があった大企業に対し、
行政指導段階での企業名の公表基準を引き下げることなどを盛り込んだ
緊急対策を公表したとニュースが流れました。

 

この月間100時間でこれまで行っていたことを
80時間に引き下げるという事のようですが、
まあ厚生労働省としてはこれでも頑張ったと観るべきかもしれません。

 

世間では高橋まつりさんの個人的なことまで取りざたされていて、
美人で東大卒で電通という
一流企業」に入りながら自殺してしまったという衝撃的な事件だったし、
仕方がないのかも知れませんが、僕には残酷なものに思えてなりません。

 

僕自身にも経験があるのですが、
自分の息子であるとか妻であるとか、
そうした家族が何か世間的な呼称である、
A会社の主任であるとか店長であるとか、
役職や一般的な呼称で呼ばれることに強い違和感を感じます。

 

 

何故なら、家族は息子、娘、姉、兄、弟などであり、
そうした一般的・社会的な呼称で考えたりしないからです。

 

 

だから僕は、無理な注文とも思うし、
半ばあきらめてもいますが、
高橋まつりさんが自分の妹であったりしたらどうなのか
という視点をどこかに持って記事を書いて欲しいと強く願っています。

 

 

それにしても、この一連の報道、
電通の社長の引責辞職の会見もありましたが、
何か釈然としないものを感じるのは私だけでしょうか。

 

 

何か大事なことを見逃しているような、
これで第一回目の幕引きとするには、
納得感がない嫌な感じがあるのですが・・・・・

 

 

そうです、それは、ホワイトカラーエクゼクションのことです。

 

 

この「残業代ゼロ法案」は、
2015年の4月3日に閣議決定され、
2015年の通常国会での法案成立を目指した政府ですが、
見送られています。

 

 

もともと米国からの強い要請があって動いていたわけですが、
人材派遣法の改正を
わずか3日間の審議で安全保障関連法案成立後に成立され、
かなりの批判を浴びたためと言われています。

 

 

そして、その後、あれだけ一時さわがれた
ホワイトカラーエクゼクションについて、
与党はダンマリを決め込みました。

 

 

これは参院選への悪影響を恐れてのことと言われています。

 

 

実際に参院選で公約にも話題にもしませんでした。

 

 

また野党も何もいわなくなっている印象です。

 

 

ホワイトカラーエクゼクション
労働者のわずか3.8%の
1千万以上の給与所得者が対象だった気がしますが、
これがなし崩しに解釈され
実際にサービス残業を増加させるのではないか、
過労死の問題を助長するのではないか
という強い反対意見が出されていたと思います。

現実問題として電通の平均年収は1千万を超えています。

 

 

そして世間が今回知るところとなった、あの企業風土です。

 

 

もし仮にこの法案、
「労働基準法等 の一部を改正する法律案」
(残業代ゼロ法案)
が真剣に検討され、
与党・野党という政党を超えて真摯に日本の労働事情に向き合い、
世界レベルで低い水準にある日本の労働環境について
国民を巻き込んだ論議がなされれば、
参院選の結果も確かにどうなったかわからず、
高橋まつりさんは死なずにすんだかもしれないと
可能性が低いにせよ思ってしまいます。

 

 

実際に監督省庁として最も近い、
労働基準局の監督官へのアンケートでは
過半数が反対意見を出しています。

 

 

僕はこれほど重要な問題であり、
閣議決定しながらも他の法案や世論の風向き、
参院選への影響などでダンマリを決め込んだ与党の責任は重いと思います。

 

 

また、
それにしっかり反対し世論を味方につけられなかった
野党の責任も重いと思います。

 

 

またそれを話題にせよと言わなかった国民の責任も重いと思います。

 

 

現実問題として、
今はだれもホワイトカラーエクゼクションを口に出しません。

 

 

まるで何も無かったかのように、
労働時間を短縮せよとか言っていますし、
電通の社長も引責退職とかで、
つまりは責任逃れの逃避としか思えないのです。

 

 

むしろ社長として、
電通の汚点を完全に払拭させることが、
企業のトップとしての責任ではないでしょうか。

 

 

また僕は、労働時間について諸外国と同様に、
国が規制することは必要だと思いますが、
日本の根強い縦型の徒弟制度を引きずっている社会、
なぜか後輩を呼び捨てにするような風土にあっては、
個人の尊厳が集団の目的のためには
軽視されてしまいがちだという事実を指摘したいと思います。

 

 

このことを踏まえたうえでの論議がなされなければ、
すべては空論としか思えないからです。

また今年2016年の衆院の法案をみると、
僕が見た限りで唯一撤回されている法案があります。

 

 

それは、「労働基準法の一部を改正する法律案」で、
2016年6月1日に提出するも衆院で撤回されていますが、
これは長時間労働を規制する法案で野党から出されたものかと思います。

 

 

事情はわかりませんが、
この法案は、11月15日に
民進、共産、自由、社民の野党4党から再提出されており、
長時間労働規制法案を罰則強化するものです。

 

 

これは80時間ごえの企業名を公表するという
今回の緊急対策から見ると時宜を得ている印象です。

 

 

これに対し、
例の閣議決定されてからどうなっているのかわからない、
ホワイトカラーエグゼンプションは、
労働基準法 の一部を改正する法律案」
(残業代ゼロ法案)といい、
なんと野党提出の法案と一文字違いです。

 

 

この法案が創設 する
「高度プロフェッショナル制度」においては、
労働者の心身を守るための趣旨もあることが
明記されているようですが、
反対される理由はあいまいな面が多すぎるからでしょう。

 

 

本来、ホワイトカラーエグゼンプションと労働基準法の強化とは、
まったく範疇が異なる考えに基づいており、
矛盾せずに共存できる可能性があるはずですが、
政党の思惑や日本人が得意な
ひとつの価値観になびく志向のために、
言い換えると単一民族であるからなのか島国根性からなのか
多様な価値観が厳として存在することを認めない
という偏見に基づいているのではないかと思えてなりません。

 

 

僕は、電通高橋まつりさんの過労死の問題が、
単に労働基準法での残業時間の徹底の話だけで終わらせるのではなく、
閣議決定までした、
ホワイトカラーエグゼンプションの話も含めて、
日本での労働ということを
日本人すべてが関わる問題として大いに論議され、
それぞれが考える幸福を求めていくべきだと考えます。

 

 

今年成立した、
カジノ解禁法は本当にすぐに成立させる必要があったのか、
年金改革関連法にしても先進国のなかで
日本ほど老後が不安だと考えている人の割合が多い国はないということも、
改めて考えるべきではないでしょうか。

 

20161229 by okkochaan