森友学園の問題でにわかに出現した会計検査院、なんとなく消化不良のまま、籠池夫妻は逆らったために閉じ込められた感があり八方ふさがりでここまでかと思いきや、すい星のごとく出現しました。
森友学園の土地の8億円値引きの根拠が不十分だと指摘した報告書を国会に提出したのです。
今後の展開に大いに興味があるところですが、ここでは、そもそも会計検査院とはなんなの?という素朴な疑問にわかりやすく解説してみたいと思います。
【会計検査院とは】
国の収入支出の決算、政府関係機関・独立行政法人等の会計、国が補助金等の財政援助を与えているものの会計などの検査を行う憲法上の独立した機関です。
憲法
第九十条 国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
○2 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。
そして法律とは会計検査院法で、第一条に次のように定められています。
会計検査院法
第一条 会計検査院は、内閣に対し独立の地位を有する。
要するに、国の財源にかかる収入・支出に関することや、支出したお金が正しく使われているかなどを調査する組織であり、調査結果は報告書の形で国会に提出することになっています。
なお、会計検査院が独立の地位を有するといっても、今年は忖度という言葉が流行語になったことだし、なんらかの癒着がないようにするためにどうしているかは気になるところです。
幸い、会計検査院はホームページでいろんな情報を公開していますので、この点について引用します。
検査官は、国会の衆・参両議院の同意を経て、内閣が任命し天皇が認証することになっています。その任期は7年で、検査の独立性を確保するため、在任中その身分が保障されています。
院長は、3人の検査官のうちから互選した人を、内閣が任命することになっています。院長は、会計検査院を代表し、また、検査官会議の議長となります。
会計検査院を代表するのは、たった3人の検査官で、そのお名前や職歴などもHPで公開されています。
3人の方のうち、会計検査院からの生え抜きは1人だけで、あと2人は大学教授や監査法人などをご退職されたあとに検査官になられています。なお女性のかたも一人いらっしゃいます。
任期が7年と非常に長いことと検査の独立性を確保するために在任中の身分が保障されているとあります。
内閣が任命する点が少し気になるのですが、身分が保障されていることと任期7年で独立性は担保されるということだと思います。
とにかく固い印象の会計検査院、泣く子も黙る会計検査院という感じですが、最近多い公務員の不祥事などは別世界の出来事であるかのように、この会計検査院だけは別の空気が漂っているように思います。
【会計検査院の組織】
会計検査院での実務部隊は事務総局といわれるところです。
このうち、第5局というのは、特別検査課ともいわれ、特定の検査対象府省・団体を持たず、機動的・横断的な検査に取り組む課だそうです。
サッカーでいえば、フリーのポジションですね。
これまで税務署はよくドラマになっていましたが、この特別検査課ももしかすると、面白い題材になりそうな気がしますね。
なお、事務総局の職員は、1,247人(平成29年1月現在定員)となっています。
【会計検査院と社会保険】
会計検査院でよく覚えているのは、20年ぐらい前の話で恐縮ですが、非正規雇用者からの社会保険料の徴収に取り組んだことです。
それまで人材派遣で働く方とか、パート勤務をする人、年金受給者などで被保険者資格取得届を社会保険事務所に届けるべき対象者がいながら届けていないというケースが最大の要因で、平成10年度決算検査報告によると40億円ほどの国に入るべき徴収額について報告されています。
平成10年度決算検査報告
会計検査院
健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの
このことは仕事に関係していたのでよく覚えています。
人材派遣については、派遣会社からみれば派遣スタッフは短期的な雇用なので、社会保険の加入・喪失を規定通りに行えば大変な事務の手間が生じることから実態に合わせた対応を考慮して欲しいという動きはありましたが、相手が会計検査院であるために、初めからあきらめムードがあったと思います。
約20年が経過しましたが、この社会保険については、派遣会社から見れば保険料の負担がコストとして重くのしかかってくるし、派遣スタッフからすると、毎回、役所に行ったりするのが手間であるので、国民年金の状態でいたいという方も多くいます。
ただ、この変更で国には確実にお金が入るようになりました。
年金問題がクローズアップされてくるのは、その少しあとからだと思いますが、現在の年金の状況では考えられないことが20年前まではあったのです。
とにかく、会計検査院とは、怖いところなのです。
【会計検査院の権限】
これまで見てきたように、会計検査院とはお金に関して守るべきことを守っていなければ、恐ろしい存在なわけですが、実際のところ、どのような権限があるのでしょうか。
憲法90条により、会計検査院の組織と権限は法律で定めるとなっています。
その法律が会計検査院法ですが、関係する条文を見てみましょう。
第26条
会計検査院は、検査上の必要により検査を受けるものに帳簿、書類その他の資料若しくは報告の提出を求め、又は関係者に質問し若しくは出頭を求めることができる。この場合において、帳簿、書類その他の資料若しくは報告の提出の求めを受け、又は質問され若しくは出頭の求めを受けたものは、これに応じなければならない。
第31条
会計検査院は、検査の結果国の会計事務を処理する職員が故意又は重大な過失により著しく国に損害を与えたと認めるときは、本属長官その他監督の責任に当る者に対し懲戒の処分を要求することができる。
② 前項の規定は、国の会計事務を処理する職員が計算書及び証拠書類の提出を怠る等計算証明の規程を守らない場合又は第二十六条の規定による要求を受けこれに応じない場合に、これを準用する。
このように、書類提出に応じなかったり、実際に故意または過失で国に著しい損害を与えたと認められれば、懲戒の処分を要求することができるというのですから、かなり強い権限を持っているわけです。
森友学園の土地価格の査定の根拠がみえないという指摘について、どこまで踏み込むのかわかりませんが、出来れば報告書だけにとどまらず、懲戒処分の要求まで踏み込んで欲しいと個人的には期待しています。
お読みいただき、ありがとうございました。
20171123 by okkochaan