この記事は、2018年12月に書いた退職代行についての記事を全面的にリライトしています。
特に退職代行の問題点に焦点をあて、それを利用者が注意するべきことに重点をおきました。
退職代行は、2018年11月にNHKのクローズアップ現代が退職代行を取り上げたことで、にわかに認知度が広がったサービスです。
最近、NHKはいろんな批判もあびていますが、こうした良い番組を作る実力は健在だと思います。
退職代行について、客観的かつ多角的にとらえています。
退職代行については、広告も多いので、客観的な情報を求めている方は読むべき記事です。
この記事では、退職代行という一種の社会現象とも言えなくはない新たなビジネスに焦点をあて、さらに深堀してみたいと思います。
退職代行のサービス内容
退職代行とは、本人に代わって退職の意思や有給休暇の取得を伝え、退職にかかる書面上のやりとり(離職票の請求、源泉徴収票の発行など)を本人に代わって行ってくれるサービスです。
現在、退職代行を利用する人には20代、30代の若い世代が多く、介護職、建設業、営業職などでの利用が多いようです。
ちょっと気になるのは、2019年4月から罰則付きでいよいよ施行される労働基準法の残業時間の制限とか有給休暇の取得義務です。
これは、大手企業が対象となり、中小企業は翌年の2020年4月からの施行が決まっています。
大手企業では、罰則つきの効果からか、しっかり取り組んでいるようですが、問題は、そのしわ寄せが下請け業者である中小企業にきていることが表面化しつつあることです。
弊害を予見して、中小企業へのしわ寄せをしてはいけないと政府は言っていますが、こちらは罰則規定もなく、大企業と中小企業の1年間のタイムラグもあり、中小企業はますます厳しくなっています。
人手不足にあえぐ中小企業は、顧客を失わないために、仕事を受けざるを得ないところも多く、それは中小企業の社員の過重労働となる危険性がきわめて高いと思えます。
それでも、人間関係が良ければ乗り切れるかもしれませんが、会社が残業面でブラック化していくなかで、生活のために必死で耐えている人は思いのほか多数いると思います。
これ以上は耐えられないので辞めたいと思っても、難しいケースがあります。
・退職を申し出る勇気がない
・退職を申し出ても「ふざけるな」と怒鳴られる
・退職を申し出てもうやむやにされる、あるいは半年はいてくれとか言われる
・退職してもいいが、損害賠償金を要求される
(あるいは、退職金はなしにするといわれる)
こうしたケースで、自分ではどうにもならない時に、退職代行を利用するのはアリだと私は考えます。
例えば、交通事故を起こした場合、当事者同士で話あうのではなく、保険会社とか弁護士が間に入ってまとめてくれますが、その方が双方にとって結果的には問題を引きずることもなく、平和に解決するのと同じことです。
退職代行の利用者数のデータはなく、退職代行会社の実績として会社が出している数字だけが頼りですが、おそらく利用者数は増加傾向ではないでしょうか。
そして、日本の労働事情を考えると、利用者の業界も広がってきているのではないかと推測します。
退職代行を利用すべき人
あえて利用すべき人と書いたのには理由があります。
あとをたたない、真面目に勤務していた人の悲劇が報じられることを考えると、そういう方こそ退職代行を検討して欲しいと願わずにはいられません。
過労死ラインを超えた残業は当然だし、パワハラとか委縮してしまうような発言で傷ついた状態に陥ってしまうと、思考そのものが出来なくなってしまいます。
その会社の影響下から完全に抜け出せればいいのですが、真面目なために逃げることも出来ないひとほど悲劇になっています。
こうした状態は、別にあなたが弱いからではありません。
ある状況におかれると、誰でもそうなる可能性が高いことなのです。
仕事なんて星の数ほどあるといわれても、その状況から逃げ出せないような環境を作る、あるいは作られてしまっていて、それはさながらクモの糸にかかった昆虫のような状態かもしれません。
クモの糸にかかった昆虫は、弱いから糸にかかったわけではなく、不運だったと誰でも思います。
なので、身近な人で苦しんでいる人がいたら、退職代行サービスを教えてあげてください。
また自分で会社や上司に話せる状態の人は、まずはそれをやってみてください。
そのうえで、どうしても辞められないとか、脅されるようなことがあれば、退職代行サービスを利用するという順序でいいと思います。
単に自分で言いずらいからという理由は、なるべくなら避けた方がいいと思います。
それは、次の就職をするときに、可能性はかなり低いですが、前の会社を退職代行サービスを利用して辞めたことがわかったとしても、相手が納得できる理由を作っておいたほうがいいからです。
少なくても、なぜ言いずらくて退職代行サービスを利用したかをはっきりしておきましょう。
また退職代行サービスを利用したという理由で不採用になったとしたら、むしろラッキーと思っていいと思います。
会社の不安: 「また退職代行を使ってすぐに辞めてしまうのではないか」
あなたの幸運:「実はブラック度がある会社かもしれない。事前にわかってよかった」
となるからです。
弁護士にお願いしたほうがいいのか
退職代行サービスを選ぶ際のポイントですが、退職代行業者には、2種類あるということは知っておきましょう。
簡単に言えば、弁護士に頼むべきか、弁護士の資格はない業者に頼むかという点です。
退職にあたって交渉事を含む場合は、弁護士資格がある方が実際に会社との連絡とすべての交渉窓口になってくれます。
これは、弁護士の資格がない人が報酬を得る目的で弁護士業務を反復継続して行うことは「非弁活動」と理解され禁止されているからです。
非弁活動とは、Wikipediaによれば以下の通りです。
法律で許されている場合を除いて、弁護士法に基づいた弁護士の資格を持たずに報酬を得る目的で弁護士法72条の行為(弁護士業務)を反復継続の意思をもって行うこと。非弁行為ともいう。
退職代行業務について、弁護士が行っている業者と弁護士がいない、あるいは単なる顧問として名前を出しているだけの業者では言い分が対立しています。
つまり、弁護士が行っている業者は、そうでない業者を非弁活動として非難しています。
また弁護士がいない業者は、単なる連絡業務であり交渉事を含まないので、非弁行為ではないと主張しています。
ちなみに、顧問弁護士がいるという場合も交渉を含む場合は、弁護士が直接窓口になるのでなければ、非弁活動となります。
この違いは、料金の違いにも現れています。
実際問題としては、交渉が必要な場面は少なく、訴訟に発展するケースもほぼないという見方もできますが、以下に該当するかたは、弁護士に依頼するほうがいいかもしれません。
・納期の決まった仕事をしていて、あなたが突然ぬけることで、損害が予見できる場合
・有給取得をして退職したいが、難しいことが予想される場合
・その他、口先だけでなく損害賠償を請求される可能性がある場合
もちろん弁護士でない退職代行業者であっても、会社に退職の意思を連絡し、有給休暇の取得をあわせて通知することと、会社との必要な連絡や書面のやり取りは窓口として代行してくれます。
特に交渉ということもなく、あなたに代わって伝えるだけで問題なくすむ場合がほとんどかもしれません。
しかし、有給休暇が10日あれば、それがあるかないかで弁護士費用は十分に出るので、ここは考えて、また実際に代行会社に相談してみてください。
ポイントは、交渉が必要なら弁護士に初めから依頼したほうがいいということです。
しかし、実際には交渉が必要とか訴訟になるケースは少ないと思えるので、ここが迷うポイントかもしれません。
実際にどのようにことが進むのか、以下で紹介します。
実際にどんな風に退職代行は進むのか
先日、ラジオに退職代行をやっている弁護士事務所の女性の弁護士の方が出演なさり、実際の採用代行業務の再現のお話をなさっていました。
それによると、会社側から見ると、以下のようにある日突然電話がかかってくるようです。
記憶だけで書きますが、表現は違っても内容は確かです。
会社:「〇〇株式会社でございます。」
弁護士:「こちらは、法律事務所〇〇の私は弁護士の〇〇と申します。
本日は、貴社の社員〇〇さんの代理としてご連絡を差し上げました。
〇〇さんは、貴社を退職なさるということで、私どもに、退職にかかる連絡と必要な手続きの代行を依頼されています。」
会社:「はあ」
弁護士:「〇〇さんは、もう出社されず2週間後に退職をなさりたいということです。
また本日より退職までの期間に有給休暇10日間を取得なさるということです。」
会社:「ええっ!ちょっと待ってください!
そんな急に一方的に言われても困ります。
本人と話をさせてください。」
弁護士:「ごもっともです。ですが、2週間の予告期間をもうけて退職する権利を〇〇さんは持っています。
反対に、貴社にそれを拒むことはできません。
また、〇〇さんは、貴社と話をしたくないと希望され、私どもに依頼されています。
今後、この問題に関するすべての連絡は、代理人である私あてにお願いいたします。
また、〇〇さんのご家族への連絡も差し控えてください。」
とまあ、こんな感じだったかと思います。
会社にとっては、まさに青天の霹靂ですが、実際には、事前に退職希望を出して断られている場合がほとんどです。
それでも、まさかという思いはあるだろうし、退職代行については、聞いたことはあるけれど、まさか自分が受ける側の当事者になるとは夢にも思わなかったのではないかと思います。
今後は、退職をいわれる側の管理職の方は、こうした退職に関する法律知識も覚えておく必要がありそうです。
また、会社のブラック度の指数として、退職代行サービスの利用率などが将来でてこないとも限りません。
明るく元気に働いているように振る舞っていても、心のなかは全く違う場合だってあるし、そうならないためには、定期的な話しやすい環境に配慮したインタビューなどを取り入れていく必要を強く感じます。
退職代行の料金相場と退職代行業者の紹介
退職代行の料金相場はおおよそ、3万円から5万円ぐらいです。
また正社員でない、アルバイトや契約社員の場合は、少し安めに設定している会社もあります。
多くの人は自分のことを特別なものと考えるため、簡単に退職できないと考えがちですが、退職の実務はあっけないぐらい簡単に終わってしまいます。
そしてほぼ100%成功しているようですが、ほとんどの会社で、万一の場合の返金保証を設定しています。
実際問題、失敗したからといって、会社に行ける状況ではなくなります。
返金保証は当然だと思います。
退職代行は業界としての歴史は浅いので、どの会社が本当に良いのかはまだまだ未知数だと思います。
実際にコンタクトをとってみて、対応や印象が良い業者に頼むことを強くお勧めします。
チェック法としては、小さな疑問をぶつけてみて、その対応をみるとわかりやすいと思います。
退職代行の大手どころは、以下の3社です。
EXIT
SARABA
退職代行コンシェルジュ
僕はここでは、これら大手ではない3社をご紹介しておきます。
画像をクリックすると退職代行会社のページをご覧になれます。
退職代行アルマジロ
特徴:料金が安いこと、アルバイト・パートにも対応しています。
若い世代向きの会社です。
キャラが可愛くてページを見るだけで癒されます!
正社員・契約社員29800 アルバイト・パート25000
退職代行ニコイチ
料金は業界最安値の28000円です。
しかも条件があった就職ができれば、料金がもどるなど特典が多いです。
14年の実績ある老舗です。
汐留パートナーズ法律事務所
やはり弁護士に頼みたいという方は、チェックしてみてください。
料金は、54000円と高めになりますが、それだけのことはあると思います。
繰り返しになりますが、依頼するかどうかは、まずは電話をし相談をしてみてからで遅くはありません。
私も、仕事に悩んで自ら命を絶ってしまった人がいます。
もしこのサービスを知り相談だけでもしていたら防げたかもしれないという思いは強くあります。
狭い世界は狭い思考しか生みません。
ぜひ相談だけでも、一歩を踏み出してみてください。
20190318 by okkochaan