70歳定年

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日のニュースで、自民党が来年の参院選比例区で「70歳定年制」の対象となる9人へのヒアリングをした結果、全員が出馬の意思を示したということを知った。

 

政治家ってそんなに面白いのかなと思うと同時に、たびたび議論されているこの改革が、なんとなくジワジワとたものとしかイメージができないので、ちょっとだけ意見を書いてみたくなった。

 

そもそも、70歳定年延長とかいうけれども、どうして諸外国のように定年廃止の議論はなされないのだろうかというのが、僕の素朴な疑問である。

 

制度の変更しか考えない貧弱な発想

「加計ありき」ではないが、定年についても「定年ありき」が前提となっている。

 

おそらく、日本社会のいろんな決まりを考えたときに、あるものを変えた方が、全くないものを作るより実効性があると判断してのことだと思うが、もう一度、ちゃんと考え直した方がいいのではないだろうか。

 

定年制度に限らず、派遣法にしても労働法にしても、上からの規制でしかものを考えていない。

 

実際問題として65歳定年もほとんどの企業で再雇用というある意味せこい方法でしのいでいるのだが、不完全と言えるだろう。

 

この状態で定年を70歳に引き上げれば、今度は企業も渋々ながら65歳までは正社員の形に変わっていくだろうという見通しなのかもしれない。

 

そして背景には年金制度の行き詰まりがあり、受給年齢を引き上げる狙いがある。

 

だが、やはり僕には、この発想はネガティブなものとしか思えない。

 

では何がポジティブな発想になるかというと、60歳以上のシニア層の求人が売手相場になるような状況のことであり、人材紹介会社が20代30代を優遇する状況が、60代以上を優遇する、もしくは同じぐらいのマーケットがあるような状況である。

 

実際問題、シニアの立場で言えば、60歳を超えて働くのは過酷な面がある。

 

・ 同じ仕事をしているのに収入は半減する

・ 何となく会社や同僚に対して引け目を感じる(身分的にも一回退職した人とみられる)

・ 能力や体力の衰えを感じる

・ 健康面での不安がある

・ 通勤が辛くなってくる

・ 変に気を使われるときがある

 

結局、会社に置いて貰っているという意識が捨てきれない。

 

これを打ち壊すには、本人が若い人たちの集団のなかにいても違和感とか孤独感を感じないだけの場合によっては鈍感力も必要だろうと思う。

 

定年を強く意識するのは50代に入ってからかもしれないが、60代を過ぎたら今度は70歳定年というものがあるわけだ。

 

僕は、定年という制度がある限り、本質的な変革は起きないだろうと思っている。

 

つまり、アメリカのように定年を年齢による差別と位置付けて、制度そのものを撤廃すべきだと考えている。

労働者側にも問題がある

誰だって生きていればいつかは年を取るし、いつかはこの世からいなくなる。

 

だが、年齢や性別によって人や自分を判断するのは、可能ならばやめるべきだと思う。

 

そうすることで、その人は、自由な発想という宝物を手に入れることが出来るからだ。

 

だから、労働者もあらゆることを年齢のせいにすべきではない。

 

そんなことをしているから、若い世代に恨まれるのだ。

 

僕自身も、20代30代のころは、当時の定年は55歳だったから、なんで元気なのに働かないのかと疑問に思っていた。

 

実際、早朝から深夜まで働いていて、世の中が不公平に思えた。

 

それが、1世代の違いで定年が15年も延長されるのは、生物学的に考えても、また医療の進歩を考えてもあり得ないことではないだろうか。

 

すべての人が死ぬまで働き続ける必要はないけれども、一回きりの人生で、しかも時間も若い人に比べれば少なくなっているわけだから、好きなことを思いっきりして生きるべきだと思っている。

 

既得権としての定年とか年金を貰うという考えは、一旦捨てた方がいいのではないだろうか。

 

シニアの意識が変わっていかない限り、経営者とか若い世代からの支持は得られないと思うべきだ。

 

ちょっと統計をみてみた

年金問題にしても、労働人口の問題にしても、結局は人口ピラミッドが無視できない状況にあることがベースになっている。

 

そこで、厚生労働省が出している資料を添付する。

出生数 死亡数
引用:人口動態統計の年間推計-厚生労働省
出生数 死亡数
引用:人口動態統計の年間推計-厚生労働省

 

 

意外と見落とされているのは、出生数が確か昨年100万人を切ってしまったが、それ以上に死亡数が多い点である。

 

2017年は差し引きで40万人の人口減となっている。

 

この1,344,000人のお亡くなりになった人に、どれほどご家族の介護が必要だったのだろう。

 

この941,000人の新生児にどれだけ明るい未来があるのだろう。

 

こうした数字の背景にあるプライベートな負担も考えなければならないことを思うと、定年70歳延長というのが、いかにも浮薄で付け焼刃的なものに思えてくる。

 

家族の介護も、60代70代の方がなさっている場合も多いだろうからだ。

 

結論

結局、働けるときに楽しく効果的に働き、プライベートな必要時にはそれに集中するということが理想だが、制度の改革ばかり議論しているとそうした実態から乖離した抽象的な話にしかならないのである。

 

またこうしたことを言うと、青くさいだとか、根拠はとか言う方がいるけれども、すぐにはかなわないから理想なのであって、理想のない方向づけというものは存在するべきではないと考えている。

 

20180601 by okkochaan