中高年ひきこもりにみる日本社会の問題はすべての人の問題でもある

あなたは、日本の社会が他人に思いやりや優しさをもちながら生活できる社会だと思うでしょうか。

 

置かれた環境や価値観によって答えは違うと思いますが、僕は少なくとももっと良くできることがたくさんあるのではないかといつも思っています。

 

内閣府は、40歳から64歳までの5千人を対象にした「生活状況に関する調査」の報告書を3月末に発表しました。

 

そのなかで、中高年のひきこもり者の数を推計61.3万人と公表しています。

 

この調査結果は波紋を呼んでいますが、これまで、ひきこもりといえば、若者に特有のものと考えられていたことを考えると、40歳から64歳の年代が初めてクローズアップされたことは評価できると思います。

 

ちなみに2015年12月に内閣府は15歳から39歳までを対象とした「若者の生活に関する調査報告」によると、ひきこもりの数は54.1万人だそうで、結果、15歳~64歳で115万人のひきこもりの方がいることになります。

 

115万人で僕がいつもイメージするのは、派遣社員の数と日本での外国人労働者の数がそれぞれおよそ130万人であることです。

 

つまり、ひきこもりの方、派遣社員、外国人労働者がほぼ等しく日本社会にあるわけです。

 

派遣社員の方や外国人労働者のなかには、収入的にも恵まれたかたもいらっしゃると思います。

 

しかし、その多くは、決して豊かではない生活をしているように思えます。

 

そして、引きこもりの方の115万人。

 

このあわせて400万人ぐらいの方々へ何ができるかという問題に取り組むことが、今後の日本の価値を創るのではないかと僕は本気で思っています。

 

自分も含めて、社会的な弱者とかひきこもりのように、何らかの理由があって人との交流を拒否している人たちに対して、なぜか冷たいように思います。

 

その意味では、今回の調査で中高年ひきこもりの7割が男性だというのも、この問題を敬遠させてしまっている一因です。

 

つまり、行政でもしっかりと的を絞った対応機関がなく、またどのように対応したらよいかわからないというのが実態だそうです。

 

中高年のひきこもりの問題を一旦おいて考えてみましょう。

 

日本人は自然な好意を行動にあらわすことが下手かもしれません。

 

たとえば、重い荷物をもった方が大変そうであれば、手を差し伸べたり声をかけてあげたりとか、日本人の内気で閉鎖的な性格が出てしまうと、自然な形で行為を示すことができなくなってしまうのです。

 

今の日本社会を客観的にとらえてみると、とりあえず衣食住については豊かでなくても対外的な体裁を保つことはほとんどの方が出来ています。

 

つまり、東南アジア諸国やインドのように、小さな子供が働いていたり、はだしで歩いていたりしていません。

 

でも、その子供たちのきらきらした眼をみて、うらやましいと思ったことはありませんか。

 

日本は、平均年齢も男性80歳、女性90歳を超えて、世界一の長寿国になっています。

 

しかし、年金は減り、医療費はあがり、核家族化と都市部への人口は集中し、かつては人生で成功したといわれる人でさえホームレスになったり、孤独死とか空家問題とかが日常的に起きています。

 

つまり長く生きてはいるけれども、決して幸せでない人生を多くの方が過ごしているのです。

 

なぜこうなってしまったのでしょうか。

 

最近になって大きな災害が相次いで、その援助の様子をみると、日本人は他者への優しさに欠けているとは思いません。

 

しかし震災のような非日常が生じて初めて一体感が得られる形というのは、わかりやすい形だと思うものの、そうではなくて、ごく平凡な日常のなかにこそ、本当の必要性があるように僕には思えてなりません。

 

今回の調査対象であった、40歳から64歳という年代が、まさに忘れられた年代であり日常なのです。

 

そして調査から読み取れば、ほとんどの方がなんらかの形で仕事をしなくなったことが、ひきこもりの契機になっています。

 

80歳の親の年金で50歳のひきこもりの子供が生活するという8050問題にしても、実際のところは、ぎりぎりの生活でしかも世間とは距離を置いて生きていたいという願望のあらわれです。

 

人間の幸不幸をその人がおかれた状況からストレートに判断することに問題はあると思います。

 

そんなに単純な話ではないことはわかります。

 

しかし、どんなに難しい顔をしている人でも、ほめられて嫌な思いをする人は少ないと思います。

 

人間の記憶としても、嫌なことより、ほめられたことや優しくされたことの記憶が強く残ります。

 

ところで、ひきこもりと言えば、日本では、アマテラスが元祖かもしれません。

 

アマテラスがひきこもり、太陽は隠れてしまうという大変な事態になったわけですが、岩戸の外で楽しい音楽や踊りをして、アマテラスを岩戸から出したようなことが本当に必要とされていると思います。

 

実際問題、ひきこもりと仕事は大きな関係があるようです。

 

特に不用意な心ない言葉をあびせたり、ハラスメントがあったりということは絶対に避けなければなりません。

 

最近増加しているDVの問題もあります。

 

そのような心ない行為をする人が、人に優しくされたことがないとか、子供時代に可愛がられなかったりとかの原因があることも確かです。

 

それは犯罪者の家庭環境や子供時代を考察することで証明されていたかと思います。

 

まずは日常生活で関わる人との関係をあらためて考えてみて、例えば1日に何回ひとをほめたとか感謝されたかということの基準値を作ってそれぞれが実践してみることから始めるというのはいかがでしょうか。

 

それによって、あなたの人生も豊かな広がりと深さを得ることと思います。

 

 

20190406 by okkochaan