非正規雇用者の割合の推移
総務省統計局より引用

今、ヤフーの意識調査で「非正規や独身であることに、焦りを感じたことがある?」というWebアンケートをやっています。

 

元記事は、『非正規シングル女性、収入12万円の「充実」と「取り残され感」』であり、冒頭の表のように非正規雇用の割合の推移をみても、むしろ非正規雇用が当たり前にある状態で、実際にどのように感じているかをストレートに聞いた形になっています。

 

質問内容は下記で、答えは「ある」「ない」の二択です。

 

総務省の労働力調査によると、35~54歳で非正規のシングル女性は2002年の約24万人が12年には約60万人に。この10年間で2.5倍と、大幅に増えました。ある女性は、親と同居し、収入は少ないけれど友人はいて「生活は充実している」一方で、「取り残されている」と感じるとも。あなたは、非正規や独身であることに、焦りを感じたことがありますか?

 

途中経過ではありますが、これに対し、7割の回答者が非正規や独身であることに焦りを感じたことがあると回答し、残りの3割が「ない」と回答しています。

 

この大勢は変わらないと思いますが、この質問のしかたでは当然とも思います。

 

今日はこれについて、実際に仕事でこうした非正規雇用の女性にかかわってきた経験から、現場の声として書き留めておきたいことを書こうと思います。

 

 

【非正規雇用とは】

 

念のためですが、非正規雇用とはアルバイト、パート、契約社員、嘱託、派遣社員などが一般的ですが、要は期限のある契約で雇用されている形態を指します。

 

このうち、派遣以外の雇用形態については、雇用主が正社員と変わらないことから雇用主の義務がかかってきますので、特定の企業に一蓮托生をしているという意味では正社員との違いは少ないことになります。

 

つまり、雇用主が解雇しようとしたときに、解雇するのが正社員の方が難しいというだけの違いということです。

 

また一般的には、非正規雇用者のほうが雇用は不安定であり、収入面でも正社員より低い場合が多いですが、例外もたくさんあります。

 

人材派遣についていえば、このシステムは欧米からの輸入ですので、日本の法律はもとより派遣先の企業に帰属意識のない形での労働力の利用というものが日本の社会になじむかどうかはビジネス的にも懸念されていました。

 

しかし、結果からみるとその懸念は杞憂にすぎず、派遣法施行前から請負契約などの形で産業界では外部の人員の利用はかなり行われており、派遣法の成立はむしろ、法整備によって法律的に存在した問題を追認することでクリアーしたかっこうとなりました。

 

そして、もともとの発想は、特別なスキルを持った人材を短期間レンタルするというものであり、その建付けで派遣法も作られましたが、もっともニーズが多かったのはパソコンでの文書を作成したり、どこの会社でもある事務とか電話応対とか社員の長期休暇の代替要員としての派遣社員でした。

 

簡単にいうと、ドクターXのような医師派遣は派遣法で禁じられていますが、派遣本来の目的は、その企業にないスキルをもった人材を派遣してもらうことであり、派遣法もそのコンセプトでつくられながらも、実際のニーズとしては代替可能な誰でもできる業務でなおかつ業務に繁忙期と閑散期があるような業務にあてられたのです。

 

これは、ニーズを考えれば当然とも言えますが、派遣法とのギャップでのダブルスタンダードな状態からくる不透明感で派遣業界は長く苦しむことになります。

 

僕は、この制度で最も犠牲になったのは長期で働いた派遣社員だと考えています。

 

「長期」という表現はあいまいですが、仮に月の収入が正社員と大きく違わないとした場合に、明らかな差がでてくるのは、3年ぐらいからかなと思います。

 

 

【3者のもたれあいが生み出したゆがみ】

 

派遣契約は、派遣社員、派遣会社、派遣先企業の3者の合意で成立しています。

 

この3者は法的には契約行為として対等ですが、状況によってその力関係は微妙に変化します。

 

ここでは細かなケースについては書きませんが、ここでは、この3者が結果的にはもたれあってもたれあって成り立っているのが人材派遣だと言っておこうと思います。

 

もたれあいを支えあってといっても、大差はありません。

 

ただ労働によっての成果物を提供しているのは派遣社員であるので、もっとも犠牲を強いられやすいのは派遣社員であるかもしれません。

 

派遣先企業は派遣社員ができるだけ長く気持ちよく働いていただければ、明らかにプラスなので、派遣社員の「善意」に甘えた形になりますし、派遣会社もそれに追随する形となっていきます。

 

では実際に派遣社員はどのような悩みを抱えているでしょうか。

 

非正規社員一般に共通するものも多いので、一般的な悩みをあげてみようと思います。

 

 

【派遣社員の一般的な悩みと解決法】

 

・人間関係:

これは最も多い悩みです。逆に言えば、人間関係を良好にできれば当面の多くの問題は解決します

これは派遣社員ということで珍しがられるような、派遣社員を使い慣れていない会社や部署であるほど発生します。

派遣会社の営業が取引前に必ず確認するのは、会社とか部署とかに派遣社員がいるかどうかですが、この質問の答えが初めてとかだったりすると派遣会社も派遣社員も警戒します。

というのは、慣れていないと過度に気をつかったり、またその逆で軽いアルバイト扱いしたり、どちらも不必要に外部の人間ととらえる点が共通していて、派遣社員が職場にとけこむのを妨げる要因となり、業務効率や仕事の継続に大きな影響を与えます。

プライベートな質問であったり、飲み会の誘いであったりは基本はしない方がいいです。

また、派遣社員との付き合い方についての教育を実施すべきでしょう。

 

・契約の安定性:

いったい自分はどのくらいの期間、ここで働けるのかという点があいまいである場合も多いです。

これは見込み期間としてもできるかぎり示しておくとよいと思います。

 

・仕事内容や職場との相性:

派遣社員は自分の意思で契約を更新するかどうかを決定できますが、もし仕事内容がやりがいのあるものであったり、自分が得たいと思うようなスキル・経験が得られるものであれば継続できると思われます。

しかし、ある程度の期間が過ぎて、周囲の状況を把握できるようになると、自分より仕事をしていないのに社員というだけで待遇がよかったり仕事を失う不安からのがれられているのが目についたりするようになります。

その状態になるとスキルがあったり年齢的に仕事が見つけやすい状況のひとほど、辞めてしまいます。

 

その他、細かいことはいろいろありますが、ポイントとしては、身分や上下関係という価値判断をできるだけ排除した偏見の少ない状態を目指すことにあります。

 

派遣社員の方を名前で呼ばず、「派遣さん」とか「パートさん」とか実際に呼ぶ企業がありましたが、派遣社員は聞こえていないふりをしたりしますが、かなり傷ついたりしています。

 

また、よく聞く話ですが、派遣社員を下にみてハラスメントを行ったり誤解を受けかねない言動をしたりして、派遣社員が訴えた場合は、途端に立場が逆転して、当事者の社員と会社が大きな犠牲を払わねばならなくなります。

 

これは、僕が全面的に派遣社員に加担して言っているのではありません。

 

派遣社員を受け入れる場合のリスクとして、ちょっとした努力で回避できることなので、十分に認識することが必要と考えているのです。

 

 

【まとめ】

 

派遣社員よりの記述になってしまいましたが、もちろん派遣社員側に非がある場合もたくさんあります。

 

ただ派遣社員は法的に言えば内部の人間ではなく他人であるし、今回の調査でもわかるとおり、7割の人は焦りや不安を感じながら生活し仕事をしているのです。

 

確かに社員からみて、派遣社員は時間で割り切って仕事ができるし、責任といっても社員とは比較にならないぐらい軽いと思われることでしょう。

 

「どうして派遣なんかやっているの?」という無神経な発言も禁句ですが、それなら派遣社員からは、「どうして正社員なんかやっているの?」となれば、フェアーです。

 

ただ、派遣社員といっても無数のバリュエーションがあり、まとめることは不可能に近いです。

 

ある時は、新卒、次に見たときは人事の担当者、その次は派遣社員、そして次は人事部長とかいうかたも何人もみてきましたので、身分によっては識別以上のことはできなくなっているというのが正しい状況だと思います。

 

2018年に入り雇用契約法が施行から5年をむかえたのと、派遣法の改正から3年満期の派遣社員がでてくる2018年(いわゆる2018年問題)は、非正規雇用の問題も実務上、かなりの負荷がかかってきます。

 

また派遣社員のほうで、雇い止めがどのぐらいでるか、実際にその派遣社員の方々はどうなっていくのかなど、懸念材料は多いですね。

 

関連記事:

2018年問題で派遣社員の雇い止めについての思い

 

20180111 by okkochaan