ホームレス なぜ働かない
これは何の花?答えは記事下です

前回、派遣とマネキンの違い(ある女性ホームレスの死から)という記事を書きましたが、ある読者の方から、その記事で紹介した僕の過去記事が面白かったという感想をいただきました。

 

その記事は、【ホームレスOさんとの交友記】というもので、僕の友人でホームレスだったOさんのことを何回かに分けて書こうとしたものです。

 

記事は4年も前のものでしたが、久々に読み返してみて、自分の文章のつたなさとか、ちょっと上から目線の態度も鼻につきました。

 

当時はブログも始めたばかりで気負いとか緊張とかが裏目に出ている記事なのかなと思います。

 

何よりも、おもしろくない記事だと思ったので、それでもその記事が面白いと言ってくれた方は、記事そのものというより、題材に興味を感じてくれたのだと思います。

 

記事が中途になっていることは、気になっていたのですが、それは続編を書くことでなにかもうOさんに会えないことを決定的にしてしまう気がしていたからかもしれません。

 

でも、今回は、そんな気持ちを振り切って、ホームレスはなぜ働かないか、どうして普通の状態に戻らないのかということについて、ほかならぬ、Oさんから聞いた理由をお伝えします。

 

ホームレスは、ひとくくりにするには難しいことだと僕は思っているので、こんな人もいたのだと話半分に読んでいただければ幸いです。

ホームレスはなぜ働かないのか(Oさんの理由)

始めに簡単にOさんについておさらいしておきます。

 

Oさんは、サラリーマン型のホームレスであり、ダンボールの家ももたないし、ましてや河川敷に住んで小屋を建てたり野菜の栽培をしたりというタイプではありません。

 

ちなみに、ホームレスのレベルでいえば、以下のように分類できるようです。

 

【初級】サラリーマン型:マンガ喫茶とかで寝泊まりしている。収入減は、アンケート調査、プリペイカードを拾って現金化、自動販売機の下から落ちている小銭集めなど。ゴミ箱あさりはしない。

【中級】ダンボール居住型:ダンボールで家をつくって居住し、廃品回収などで生計を立てる。このレベルになるとゴミ箱あさりもする。徒然草で有名な鴨長明も方丈記の名前の由来ともなっている移動型の小屋で生活していたホームレスです。

【上級】河川敷居住型:河川敷に小屋を建て、畑を作って栽培したり、川魚を釣って食べたりしている。人と離れて生活しているので、ホームレスというより、無人島で一人暮らしをしているイメージに近い。

 

上記の分類に従うと、Oさんは初級ということになりますが、これは彼がホームレスになってから3年程度ということとも一致します。

 

さて、僕のところにOさんが来るようになってから、僕は何度か彼を現在の状況から普通の状態(つまりホームレスでない状態)に戻れるようにしようとしました。

 

今思うと、それはとんでもない思いあがった考えであることがわかります。

 

行政がホームレスをなくしたいというのは、当然です。

 

単に治安とか衛生上の問題とか考えれば、身近にホームレスの方がいらっしゃることは不安材料になります。

 

しかし、僕は行政の人間ではないし、一般的な感性に従って、「ホームレス=良くない状態」と考え、Oさんがホームレスから脱却できるように何度か話をしてみました。

 

当時、僕は人材会社に勤務していたので、契約社員で雇い入れることも不可能ではありませんでした。またかつて一緒に仕事もしていたので、彼の仕事ぶりはよくわかっていました。

 

しかし彼は全くその気がなく、いつも僕がちょっと話してみただけで終わりましたが、彼の理由は主に3つありました。

 

理由1.今の生活が気に入っている。乞食は3日やったらやめられないというのは、真実であると僕は理解しました。

彼にとって、今さら通勤して一日8時間も拘束されることは耐えがたいことだったのです。そしてこの理由1.が最大の理由であるように思えます。

また、これは彼がサラリーマンをする上で、大きな障害になっていたはずなのですが、彼には周囲の人間が馬鹿にみえてしかたがないということがありました。

僕は彼に何度も言われたのでよく覚えているのですが、「〇〇さん(僕のことです)や俺とかは、周りが馬鹿に見えてしかたがないよね」と真面目な顔をして言っていました。

ちなみに、彼によると、僕には一つだけ欠点があるそうで、それは、裏社会についての知識・経験が不足していることなのだそうです。

それ以外は、パーフェクトとのお褒めをいただいていました。

 

理由2.当面のまとまった生活資金がない。

これは屁理屈というか、たいした問題ではないように思うのですが、彼が理由としてあげていました。

要は部屋を確保して、何とか1カ月分の生活費を捻出できればいいので、僕も援助する気になっていたし、行政からなんらかの支援もあるのではないかと思いました。

ただ、問題は理由3.とも関係しています。

 

理由3.住民票がない、もしくはどうなっているのかわからない。

確かにまともな会社であれば、住民票がない人を雇うことはできません。ホームレスの場合、住民票は最終的には本籍地に戻るので、最後に住民票があった場所、もしくは本籍地からたどれば状態は確認できるはずです。

しかし、当時の彼は、住民税などの未納分の支払いをむしろ恐れていたようです。

詳しくはわからないのですが、以前の収入がかなりあったので、住民税や社会保険料の未納額も半端ない金額であったようです。これは以前、一緒に働いていた時に、その高額な社会保険料に驚いた人事が問い合わせをしてきたことがあるので、よく覚えています。

彼の住民票については、後日談があるのですが、彼は生活保護を利用した悪徳NGOに引っかかり、この問題もこの時に解決したはずです。

生活保護を利用した悪徳NGOとは、表向きはホームレスの社会復帰などをお題目に掲げていますが、実態はホームレスの住民票を取得して生活保護を受けさせ、なおかつゴミ処理場などで働かせ、タコ部屋とわずかなご飯の名目で、かなりの額をピンハネしている業者です。

おそらく仕事でのピンハネも人材派遣会社顔負けの率と思われ、ほとんどのホームレスは脱走してしまうようです。

 

以上3つのことを、もちろん彼は一度に言ったわけではなく、僕が普通に戻るための提案をするたびに、それらのどれかを言ったり、組み合わせて話をしたりしたのです。

 

僕が特に注目したのは、理由1.ですが、無意識にせよ意識的にせよ同じことですが、僕はホームレスをいけないこと、自分がなりたくない状態、やむを得ずホームレスになってしまったら、何とかまともな社会人に戻るように努力すべきだという風に考えていました。

 

でも、これは大きな間違いではないかと今では思っています。

 

なぜか。

 

先日、中学生グループが河川敷に暮らしているホームレスを殺してしまったという事件がありました。

 

中学生グループは反省し、未成年であるので、それほど思い罰は受けないかもしれませんが、やったことの意味については、これからの人生で少しずつわかってくるのではないかと思うからです。

 

一人のホームレスは、仕事や生活で毎日流され疲れている一般の人たちよりも、考える時間が多くあり、その分だけ深い宇宙のような世界をもっていると推測できます。

 

であれば、ホームレスを一概に否定したり、無理に自分たちの価値観に当てはめようとすることは愚かな行為ではないでしょうか。

 

むしろ、共存できる形を具体的にだしていったほうが良いと僕は思っています。

 

ホームレスは人種でもないし、誰でもいつでもホームレスになる可能性があります。

 

リア王のように、すべてを失って初めてわかることもあるのだと僕は思っています。

 

ホームレスのOさんのシリーズは、最終回のOさんとの別れを書いて一旦、終わろうと思います。

 

お読みいただき、ありがとうございました。

 

 

ps 花はユズの花です。家のヒメユズですが、僕はジャムを作っています。

 

20210613 by okkochaan