人材派遣の営業はクレームに慣れることができるか

人材派遣会社で営業をなさっている方とか、これから人材派遣の営業の仕事をしようと思っている方は、クレーム対応について不安に思ったり悩んだりしているかもしれません。

 

サービス業である以上、クレーム対応をすることは避けられませんが、よく言われるようにクレームをチャンスと受け止めて対応するなどというのは理想論にしか思えないと思います。

 

そのうえ、人材派遣の営業の場合は、他の業種と異なる点として、顧客が派遣先の企業とスタッフと2方向にいるので、クレームも両方向からあり得ます。

 

その状況については、下記で書いています。

人材派遣のおもしろ話 【人材派遣の営業の仕事がきつい理由】

 

できれば、自分なら神対応ができると頭で思ったとしても、いざ目の前にクレームが突き付けられることが連続したりすると、精神的に参ってしまう人も多いと思います。

 

一方で、仕事に慣れた先輩をみると平然と何事もなかったかのように仕事をこなしています。

 

自分はちょっとしたことで、くよくよしているのに、この差はなんなんだろうと思う事でしょう。

 

この記事では、どうしたらクレームに対して、動じないで対応することができるようになれるかについて、書いています。

 

これを読むことにより、あなたは、どのような状況でも、粛々と仕事をすすめることが出来るようになります。

 

人材派遣の営業はクレームに慣れることはできない

 

僕は人材派遣の営業の仕事を20年以上やりました。

 

その上での結論ですが、人材派遣の営業がクレームに慣れることはないということです。

 

つまり、いつまでたっても、クレームは嫌なものなのです。

 

逆にクレームが大好きで、チャンスだと思っている超ポジティブな営業がいるのであれば、お目にかかりたいと思っています。

 

あなたが真っ先に認識すべきことは、このことです。

 

どんなに平然としている先輩営業がいたとしても、それは、そのように見せかけているだけであり、内心は、不安や動揺、悩みなどが渦巻いているのです。

 

クレームはいつまでたっても嫌なものであること、クレームが快感になることなどは、あり得ないとしっかり認識しましょう。

 

クレーム処理の方法の基本も、事態を正確に認識することから始まります。

 

なぜ、派遣先の担当者は怒っているのか、なぜスタッフは仕事や職場が嫌なのか、なぜスタッフは突然連絡もなく仕事をバックレてしまったのかについて、あなたは考えて検証し、あなたがすべき最善の解決を考え、実行していくだけです。

 

クレーム対応を最優先するのは当然ですが、それは、今後の対応の方向を決め、その場で可能なことをすべてやるという意味であり、その処置がすんだら、すぐに他の業務に戻らなければなりません。

 

他の業務(新規開拓や管理業務など)に、クレームによる影響があってはなりません。

 

クレームにそこまでの権利はないからです。

 

そこは完全に分けて考えます。

 

こうして忙しく仕事が流れていくうちに、クレームに慣れることはできないにしても、その影響は徐々に日常業務のなかに埋没していき、それ以上の主張をすることは少なくなっていきます。

 

 

大事なことは自分の営業スタイルを確立すること

 

クレームに動揺するのは、クレームに対して、免疫がないためということもできます。

 

平たく言うと、それに対応する型ができていないからにすぎないということです。

 

柔道で受け身の型ができていれば、衝撃を最小限に抑えることができるのと全く同じです。

 

その型をつかむためには、自分の営業スタイルを確立すれば良いのです。

 

それは、あなたが道を究めて何か崇高なものに到達するといった類のことではありません。

 

むしろ、あなたが燃えるハートをもちつつも、自分をシステムとして認識しなおすということなのです。

 

クレームをめぐる事象が、あなたというシステムを通して処理されていくというイメージです。

 

人材派遣が社会に受け入れられている以上、あなたが期待されているのも、まさにそこなのです。

 

一方で、クレームにいつまでも慣れないという要素は人のお世話をするという意味では美点なのですから、それをあえて捨てる必要もありません。

 

こうして、自分をシステムとして認識するということが、あなた自身の営業スタイルの確立でもあるわけです。

 

 

労働局の「あっせん」の事例

 

最後に僕の体験ではありますが、労働局の個別紛争の解決としてある「あっせん」に発展したケースを紹介します。

 

特に興味なければ読む必要はありませんが、これを書く目的は、いかに他の職業にくらべても人材派遣の営業に負担が多いかを知ってもらうためです。

 

「あっせん」とは、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づく3つの紛争解決援助制度であり、どちらが正しいと判断するのではなく、双方の妥協点を見出して労働関係の紛争を解決することを目的としています。

 

この件は、紹介予定派遣で6か月のマックス期間を満了したスタッフが、1か月前の解雇予告がなかったという理由で、解雇予告金および精神的な慰謝料(合わせて約1か月分の給料相当額)を請求したケースです。

 

僕のほうは、終了の2か月前から、派遣終了日まで数度にわたり、雇用契約は期日をもって終了する旨を明確に伝えていました。

 

しかし、派遣先の結論が出たのは、契約最終日だったのです。

 

苦肉の策として一般派遣に切り替えることを強く提案すべきだったかという反省点がありますが、派遣先はそれを望んでいませんでした。

 

結局、スタッフに対しては酷な結果になってしまいましたが、すでに何度も契約更新はなく期日で雇用契約は終了すると伝えているので落度はありません。

 

ほとんどのトラブルがそうですが、このケースの場合もスタッフとのコミュニケーションは普段からうまくとれませんでした。

 

派遣当初から6か月の間、悩ましく思っていたのです。

 

そして「あっせん」となり、その場にいた中年の女性弁護士からは、内容の照査などはいっさいなく、いきなり、妥協案の金額「切りがいい所で〇〇万円でどうですか?」との発言で非常に驚きました。

 

全くもって、なにが切りがいいのか意味不明だし、この点だけとれば、弁護士とはなんと楽な商売だろうと思ったのです。

 

結局、その場では決裂し、その後、労働局の方が間に入り、落ち着いた金額での解決となりました。

 

その金額は、スタッフの当初の希望からみると、かなりの少額でした。

 

僕の気持ちとしては、何一つ間違っていないのにどうしてお金を払わなければならないのか理解できませんでしたが、「あっせん」とはそのようなもので、「あっせん」になった段階でゼロ回答は出来ないものだそうです。

 

しかし、一方で、僕はこんな目にあっているのにスタッフをかわいそうに思ったことを覚えています。

 

多分、これがクレームに慣れない面の気持ちの問題なのでしょう。

 

こんな少額を大真面目に数人の大人が本人ぬきに話していることが、とても馬鹿馬鹿しいことにも思いました。

 

また、そのあっせんの場で、僕は、スタッフに連絡が非常にとりずらく、僕も苦痛だったことを話しています。

 

そして、労働局の方が、スタッフの金額の同意をとることになったのですが、今度は、労働局とスタッフの連絡がとれません。

 

労働局の方も困ってしまい、僕に連絡してきました。

 

「すみませんが、僕も、あっせんの時に申しあげましたよね。僕も連絡が取れずに苦しんだんです。」

 

と僕は冷たく突き放しました。

 

冷静に考えてみると、スタッフは別としても、この件で苦しんだのは僕だけではないかと思います。

 

結局、スタッフから労働局に訴え、少額ではありますがお金を受け取れる状況になったのに、それを知ることも受け取ることもなく、「連絡とれず」で本件は決着となりました。

 

今考えても、不思議なスタッフでしたし、美人といえる若い女性でしたが、何か良い仕事を見つけたのではないかと思います。

 

お金を出すことになった派遣会社も、いったん支払い予定になったお金をもどす事務が生じたことは言うまでもありません。

 

 

結論

 

・ クレイムに慣れることは出来ないし慣れる必要もない

・ 自分の営業スタイルを確立することが大事

 

 

20190225 by okkochaan