多重人格の裁判で画期的な判決(オーストラリア)
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BBCが伝えたところによると、解離性同一性障害(DID)あるいは多重人格障害(MPD)と診断された被害者が本人以外の人格で証言し、有罪判決を勝ち取ったそうです。

2500の人格で父親からの虐待を生き延びた女性

 

海外での判決ではありますが、本人以外の人格での証言からの有罪判決は、オーストラリアでも、世界でも初めてのことだとされているので、今後、各国の裁判にも大きな影響がでそうです。

 

また多重人格が「市民権」を持ったという意味でも画期的ではないでしょうか。

これまでの多重人格の裁判の主な流れ

多重人格のほとんどは、幼少期における虐待から、その苦しみを逃れるために別の人格が生まれることで始まります。

 

そのため、多重人格(解離性同一性障害)の患者の多くは被害者となるのですが、どのような被害を受けたかの証言は、証言としての信用性を担保しずらい状況は理解できるかと思います。

 

また、被害を受けたときに本人とは別の人格が受けているので、本人は被害そのものを覚えていないし、その後生まれてくるリーダー格をもった人格によって眠らされている場合も多いのです。

 

加害者は罪を逃れるために被害者の証言の信ぴょう性に疑問を投げかけれるだけで、裁判員の印象は大きく影響を受けてしまいます。

 

ともかく、この解離性同一性障害(DID)という病気は、その病気の存在そのものを否定する方も多く、法廷の場でも陪審員の質問攻撃にあって別の人格がうまく現れないこともあり、結果、裁判では別人格による証言によって有罪にもっていくことには大きな障害がありました。

 

また、同じ法廷に立つにせよ、DIDによる心神耗弱を理由として無罪とか減刑を主張するケースは多いですが、原告側に立つケースが少なかったのです。

 

被告側に立つケースとして、もっとも有名なのは、アメリカのビリー・ミリガンの例です。

 

これは小説にもなっているし、日本のテレビでも取り上げられたことがあります。

 

とくに脳内のスポットといわれる周囲が暗いなかに一点照らされた場所があって、その周囲を多数の人格が囲んでいてスポットに入った人格が意識を持つという実態が分かった点は大きいと思います。

 

 

また、最近の日本の裁判で、「多重人格」被告の責任能力を認めた例があります。

 

「多重人格」被告の責任能力認める 西成准看護師殺害で無期判決

これは2019年3月14日の大阪地裁の判決です。

 

起訴内容は強盗殺人罪ですが、弁護側は、多重人格が現れる「解離性同一性障害」の影響により別の人格に支配され、行動を制御できない心神耗弱状態だったと主張。

 

これに対し、裁判長は「別人格が主体だったとしても行動の制御ができており、犯行は被告の責任」と退けています。

 

この判決は責任能力を認めたという意味では、今回のシドニーでの証言能力を認めたものと対となるものとみることも出来ると思います。

 

この判決がでる丁度1か月前に、僕は以下の記事を書きました。

 

多重人格とはどのようなものか その片鱗がわかる本

この本に書いてあったのですが、そもそも裁判においては、陪審員はもとより、裁判官、検事に対して、解離性同一性障害とはどのような病気なのかという説明から入る必要があります。

 

説明して理解して貰えない場合もあるのは、この病気の存在を否定する人がいることと同じです。

 

アメリカのビリー・ミリガンの場合は、事情聴取によってビリーが言っていることに警察はじめ聴取を行った人たちが信ぴょう性を感じたので、はじめて病気としての認識がなされたとも言えます。

 

現在でも対話、それも本当に根気のいる対話を通じてしか治療法がないという難病ですが、少しずつでもこの病気が認知されていっていることは間違いありません。

 

まあ、うつ病もほんのちょっと前までは、怠け者の言い訳ぐらいにしかとられなかったので、それと似ている面があると思います。

 

また脳科学的に意識とは何かについては、かなり解明されていると思いますが、人格だとか霊の存在は?とかはまだまだ未知ですね。

 

 

多重人格を興味本位で面白そうとか、苦痛がなくて便利、とか思うかもしれません。

 

しかし、これは明らかに病気であり、しかも新たに生まれた人格は、「体をもたない人間」なんです。

 

多重人格をもつしか生きる道がなかったという人たちの生きざまは壮絶なものであり、また苦しんでいることは知っておいてください。

 

 

20200112 by okkochaan