人材派遣 営業 やり方

これから営業列伝として僕の記憶が鮮やかなうちに個々の営業について書いていきます。

 

話として面白くということを念頭に書いていきますが、何かの形で参考になり、
人材派遣に限らず、営業でいきづまっている方に営業手法や、やり方への工夫の
お役にたてば望外の幸せです。

 

現時点で、僕の頭の中には、3人の営業が浮かんでいます。

 

この3人の共通点は二つあります。

 

まず、3人とも僕は友達には絶対になりたくないことです。

 

その理由はブログを読んでいただければ、お察しいただけるかと思っています。

 

2つめですが、3人とも耳が不自由なのではないかと今でも疑っています。

 

つまり、自分に都合の良い話にしか反応しないし、本当に聞こえてないのかと疑うこともしばしばありました。

 

第一回に登場するのは、Kさんという年配の男性営業です。

 

Kさんの概略

Kさんはもともと自衛官で、自衛隊では順調に出世していたらしく、すでに恩給がもらえることも確定していました。

 

理由はわかりませんが、自衛隊をやめて、工場のようなところで働いていました。

 

その工場のようなところでも、さして仕事をするでもなく、数人の管理者としていばりまくっていたようです。

 

当然、職場では嫌われていました。

 

古風な価値観をもった方で、力の強い人には媚を売り、弱いものはいじめるという性格でした。

 

しかもケチで、貰い酒ならするけれども、自分で金を出して飲みに行ったりは決してしませんでした。

 

もっとも一度だけ飲みに行こうと誘われた方の話を聞いたことがありますが、
何のことはない、駅のキオスクで缶ビールとスルメイカを買って、その場で飲むと
いうものでした!

 

もちろん、缶ビールは一本だけです。

 

ただ、ケチは決して悪いことではなく、節約家という見方も可能です。

 

現に、Kさんは、庭付きの立派な家を建て、好きな盆栽とか庭石とかに熱中していました。

 

しかし、Kさんは、誰が見ても卑怯としか言いようのない、行為をしたことがあるそうです。

 

その工場のような職場でのことですが、Kさんは、他部署から預かった重要な書類を
煙草で焦がしてしまいました。

 

しかも、よりによって、その書類の肝になっている数字のところが丸く焼けて
判読できない状態になってしまいました。

 

ここで普通の方であれば、いさぎよく非を認めて、処分はともかくお詫びをする
ところですが、Kさんがとった行動は卑劣なものでした。

 

何もわからない新入社員が出社するなり、その書類をもって、部署に連れていき・・・

 

そして、

 

「すみません、この者がやりました。」

 

と新入社員の頭を後ろから押してあやまらせたのです。

 

そして、その新入社員に対しては、こんなことを言ったそうです。

 

「いやー、申し訳ない。ただ、俺がやったことがわかったら、部署としてもまずいので、
こうするしかなかったんだ。」

 

さて、この手の話は無数といっていいほど、Kさんにはあります。

 

全くもって軽蔑すべき人間だし、どこか良い所があるのかと思うほどですが、
これほどのことをしながらも、どこか憎めない面もあったのです。

 

そんな彼が、50を過ぎて、それまで全くやったことのない人材派遣の営業の
新規開拓で、非常に大きな成果を出したのですから、本当に人間というものは、
わからないものです。

 

それにKさんは、通常のビジネスマナーも知らないし、思い込みや勘違いも
日常的にある状態、おまけにパソコンに弱くノートもとらないので、机の周りには、
ポストイットに書いたメモが七夕のようにぶら下がっている状態だったのです。

 

Kさんの営業手法

Kさんの営業手法は主に2つありました。

1.紹介依頼の戦略

紹介依頼をしまくって、紹介者→紹介者→紹介者という感じで、もともとの紹介者が
誰だったか、Kさんすら覚えていない状態になりながらも、大企業の社員が上からの
指示を無視することが出来ず、Kさんを使わざるを得ない状況をつくることです。

 

大企業に勤めるサラリーマンの心理を利用した巧妙な戦略といえます。

 

当然ながら、その派遣依頼は、他社に出しているような案件ではない場合が
ほとんどでしたので、ほぼ確実に派遣していました。

 

企業の担当者は付き合いのある信頼できる派遣会社に頼みたいことでも、しかたなく、
一回ぐらいお付き合いするかという状態になります。

 

この営業手法は特に目新しいものではありませんが、その対象となる企業が
日本を代表するそうそうたる企業や世界的な外資企業ばかりであったことは驚きです。

 

ちなみに、これはと思う担当者を見つけると、Kさんも好きなゴルフの話に持っていき、
相手もゴルフをするとなると、会社のコンペに合わせて、パターなどをプレゼント
していました。

 

しかも、そのパターはその企業をターゲットとしている支店に買わせて経費で
落としてもらい、さも自分が買ったように持って行ったのです。

 

もちろん、ほとんどの場合、大きな結果が出ていて、それは、現在でも
続いていたりすると思います。

 

プレゼントに関しては、今では大手の企業であるほど業者からの贈り物を
もらうことに関しては厳しいので、現在では難しい手法かもしれません。

 

ただ、もしKさんが今営業をしていたら、その問題も何らかの形でクリアーするような
気がします。

 

付け足しですが、Kさんはケチなくせに人に物をあげるのが好きでした。

 

例えば、自分がしている若い人は貰っても迷惑するような腕時計を気が向いたときに
あげたりします。

 

別に価値がある時計ではなく、ごく普通の腕時計です。

 

相手は、しかたなく貰います。

 

ただ可笑しいのは、それからほどなくして、Kさんは、「やっぱり返してくれ」
というのです。

 

相手は、もちろん拒否してもいいわけですが、もともと押し付けられたものなので、
素直に返すわけです。

 

2.その場での一撃必殺の手法

この手法については、Kさんから直接教えられましたが、気が弱い僕は
一度もやったことがありません。

 

何度もやってみたいと思いながらも、結局、出来ませんでした。

 

その驚きの手法をKさんの語調を復元して書いてみます。

 

『なあO君、こないだ新規で飛び込んだところで、わざとオフィスをジロジロ見回して、
担当者に、
「こんな会社じゃ派遣スタッフなんか使ってないですよね」
と馬鹿にした口調で言ってみたんだ。
そしたら、「いますよ!」と言いやがった。
バカはけしかけるとムキになって言うからな。』

 

これをKさんは、いかにも楽しそうに話しました。

 

その後、Kさんはこの人をわざと馬鹿にする手法で、多くの派遣オーダーを
とったようです。

 

ただ、この手法はよほど相手を見極めて安全を確認して行うことをお勧めします。

 

また、別な話ですが、Kさんと同行した営業が笑いながらこんな話をしたことが
あります。

 

『Kさんと同行したとき、応接に通されて、Kさんは担当者にどこの派遣会社と取引を
しているか聞いたんだ。
担当者は、P社T社R社など上げたんだけど、
Kさんは、黙って下を向いているかと
思ったら、無言で片手を顔の前に立てて、ウチワで仰ぐように何度か左右に振って、
ダメダメダメという意思表示をしたんだよ。

 

担当者にしてみれば、もしかするとだけど、ちょっと不安に思ったんじゃないかな。

 

自分は派遣担当を引き継いでP社T社R社と惰性で付き合っているし、派遣の質は
悪くないと思っている。

 

けど、こうして無言で否定されると、自分が業者選定をしっかりしないことで、
職務怠慢だとされるのではないか、
これまでの取引だけでなく、もっと良い
派遣会社が本当にあるんじゃないかという気になったんだと思う。

 

でも、驚いたのはその次の瞬間で、Kさんは、沈黙を破って突然立ち上がり、
「〇〇〇〇(Kさんの氏名)をよろしくお願いします!」
と大声で言って頭を下げたんだ。

 

なぜか俺も一緒に立ち上がって頭を下げる羽目になった。

 

担当者は苦笑いしていたよ。』

 

この構図は、工場のような職場で新入社員に責任転嫁した事件と全く同じなので、
僕は笑ってしまいましたが、その後すぐにその会社から派遣オーダーが来たのは
言うまでもありません。

 

終わりに

以上が、営業列伝一回目のKさんの話です。

 

どのような感想をお持ちになったでしょうか。

 

現在では通用しないとか思ったかもしれませんね。

 

そういえば、紹介依頼戦略で忘れてはならない実績があるのですが、それはKさんが、
外資系の証券会社や投資顧問会社を数多く新規開拓したことです。

 

その当時、外資の証券会社が日本法人をつくったり、拡大したりするときに、
日本の大手証券会社から多くの人材を引き抜いて、社長はじめセールス、トレーダー、
決済などの事務部門などにつけていました。

 

多い時には、社長以下50人を一気に転職させ、日本法人をつくったりしていたのです。

 

外資流にヘッドハンターを使ったのだと思います。

 

当時、一般職の場合で、給料は2倍が相場でした。

 

そして、こんな状況で、K氏は、ある大手の日本の証券会社出身者で外資金融に
移った人たちのOB会の会長を押さえていました。

 

その会長は僕も存じ上げていましたが、非常に気さくな方で、どんどん外資の
社長や役員になった方を紹介してくれました。

 

あとはアポイントを取って会いにゆき、人事担当者を紹介してもらえばよかったし、
派遣依頼は先方も腐るほどもっていました。

 

外資系が日本企業と違うのは、人事担当者が日本企業のように上からの指示を
忖度などしないことです。

 

そこはさっぱりしているので、頭も尻尾もなく、初対面であってもいきなり
核心にせまる会話が無駄なくできるのは、僕の性格にも合っていました。

 

忖度こそしなけれども、排除する理由もなく、すぐに依頼をくれました。

 

そんな中で、大手でありながら、当時は需要がなく、なかなか依頼がもらえない会社が
ありました。

 

そこはK氏も珍しく何度も営業したらしいのですが、やっと依頼がもらえることに
なって、K氏と挨拶に伺ったとことがあります。

 

その会社はその後、爆発的な派遣需要が発生したのですが、後日、その女性担当者と
会った時に、なにかのはずみで、彼女が言った言葉が忘れられません。

 

「Kさん、見てるとなんだかかわいそうになっちゃったんで、オーダーを出したのよ。」

 

僕は、その外資向きの強い性格の彼女が、あのKさんを「かわいそうに思う」
というのが冗談だと思って、聞き返したのですが、
「だって、あのお歳で営業をしてるって大変でしょう。私の父ぐらいの年齢だもの。」
と言いました。

 

身もふたもない話になりますが、Kさんの営業力とか手法がすごいとか言っているけど、
実はこの外資の女性担当者のような心情からオーダーを出してくれていたのかも
しれないと、ふと思ったのです。

 

ちなみに、K氏は、性格とか風体とかが、どこかあの寅さんのようなイメージの人です。

 

ケチで卑怯で事務能力はおろか、マナーもなにもないKさんは、僕にとっても
友達にしたい人ではありませんが、やはり、憎めない人だったのです。

 

そしてKさんの新規開拓した企業への派遣は伸び続け、もちろん今では、
誰が開拓したかなど誰も知らないし興味も無いことだろうと思います。

 

しかし、僕には、ケチなKさんが派遣会社に大きな利益を運んだと思うと
感慨深いものがあるのです。

 

20190910 by okkochaan