人材派遣の営業のコツという話になると、新規開拓の営業力ばかりフォーカスされがちですが、僕は、ちょっと違う意見を持っています。
それは、僕自身が新規開拓でほとんど苦労したことがないという事情もあります。
僕の能力というより、人材派遣の営業の仕事全体を冷静に分析してみれば、新規開拓の占める割合など大したことがないことがわかると思います。
では、どのような能力が必要となるかと言うと、それは一言で言えば、問題解決能力だと思います。
全体の業務内容から難易度を考えると、ざっくりとこうなると思います。
企業への提案>人選>トラブル解決>新規開拓
トラブル解決については、個別に難易度に大きな違いがありますが、上司などがからんでの対応になる場合もあるので、この順番にしています。
この記事では、問題解決能力を人材派遣の仕事の各場面から具体的に解説しています。
主に問題解決能力が必要とされる3つの場面
1.提案能力(依頼内容を顧客のいう事を鵜呑みにせず、他の方向性を具体的に提示する能力)
何度も足を運んで、初めて依頼を貰った時は、営業として非常に嬉しい瞬間でもあります。
自分の熱意が評価されて依頼がもらえたと思いたいところですが、人材派遣の営業の場合、それほど手放しで喜んではいられません。
メーカーのように、ライバルB社と自分が所属するA社のどちらに発注するかという話とは全く違うからです。
人材派遣の場合は、スタッフを派遣しないことには、1円にもならないからです。
それに、その会社が取引している派遣会社になんらかの不満があるとか、なかなか求めている人材を紹介をしてくれないということも考えられます。
まずは、依頼内容をよく聞いて、派遣の難易度を正確に判定しなければなりません。
そして実際に登録者のなかに適合する人がいるのかどうか、いない場合は募集して解決できるのか出来ないのかなどの一次判定は瞬時に行うべきです。
そのうえで、あらためて依頼内容を見直し、その依頼の本質的なものは何なのかを把握するのです。
もし、その依頼の本質的なものが、ミスユニバースクラスの知的で健康な美人を派遣して欲しいというものであれば、その点については、妥協なく派遣しなければなりません。
(ちなみに、僕自身はミスユニバース日本代表の方を派遣をしたこともありますが、本人がそれを知られるのを嫌がっていたので、企業には絶対に知らせませんでした。)
しかし、一般的に多いのは、派遣スタッフの年齢への要望とか、女性を希望するとか、日本人を希望するとか、労働法の趣旨に照らすと少し問題がある依頼であることがほとんどです。
提案力が必要なのは、ここです。
相手が採用に慣れている方であり、職安に求人票をだしたりすることにも通じているのであれば、職安の求人申し込みの書式に年齢制限の項目があることもご存知だと思います。
そして年齢制限をする理由については、選択式になっており、「社員の年齢バランスから」という理由を選択すればいいだけです。
(これは実務的な判断なのでしょうが、僕は、年齢を制限する合理的な理由に該当するのかと、おかしいと思っている点です。)
人材派遣の営業としては、なんとかこの年齢の条件を広げて、現状、仕事を探している登録スタッフに就業の機会を与えなければなりません。
問題は、この時の交渉の仕方ですが、お客様の条件を緩和して欲しいという交渉であってはならないということがポイントになります。
たとえば、35歳未満の女性を派遣して欲しいという依頼だったとします。
お客様の理由としては、現場の指揮命令者が35歳の女性だから、彼女よりは年下の方が良いと考えている場合がほとんどです。
なんとなく年功序列がムード的に残っている企業の場合、そうなります。
こうしたケースの場合、僕だったら、基本的に年齢枠を全廃した方がいいということと、あえて言えば、25歳以下かもしくは45歳以上の方がいい思いますと提案します。
なぜなら、下手に年齢が近い同性の人のほうが、変なライバル意識をもったりしてうまくいかない場合が多いからです。
それよりは、10歳以上年齢が離れているほうが、お互い立場を簡単に認識できて、仕事に集中できると考えるからです。
また、その指揮命令者の35歳の女性が初めて派遣スタッフを使う立場であればマネジメント能力を高める良いチャンスではないかと言います。
こうして、年齢を45歳以上まで高めていただいて妥協していただくのではなく、逆に派遣スタッフの利用法について、新しい認識をしていただき、むしろ45歳以上のスタッフを積極的に受け入れた方がプラスになるとお客様も納得していただいたほうがスムーズにいくことは言うまでもありません。
そして、最後に年齢は関係ないという大原則も確認しておきます。
この交渉で、お客様の希望にそった人選はかなり容易になるし、実際に良い派遣ができるようになるのです。
同じようなことは、性別や国籍別でも言えます。
ほとんどの場合、女性を想定している仕事に男性を派遣するという形になるとは思いますが、僕は40代50代の男性を多数派遣してきました。
2.人選能力(上記を踏まえたうえで、適切な人材を選出する能力)
前項と関係しますが、せっかく派遣依頼を貰っても、派遣できなければ全く意味がありません。
それまでの努力が無駄になるばかりか、労力や経費がすべてマイナスとなります。
厳しい言い方をすると、派遣できないなら、新規営業などしないほうがマシだったのです。
僕が新規の営業をしても、派遣依頼を積極的には取らなかった理由もここにあります。
いずれにしても、この最後の詰めである人選はものすごく重要です。
人選を分業にしている場合でも、人選を自分でやる場合でも、登録スタッフの状況については、よく理解している必要があります。
僕の場合は、会社のシステムとは別に自分でエクセルシートを作り、職種別に管理していました。
依頼を貰ってから人選に入るというのでは、遅すぎると考えていたからです。
理想形としては、依頼が入った段階で、人選が完了している形になります。
なので、人選ではなくスタッフには単に連絡なのでした。
あとは、そのリストを人選担当に渡して連絡をとっても貰ってもいいし、自分で連絡をとってもいいという方法で、現状ではこれ以上の方法はないと思っています。
もちろん、リストが命ですので、リストを最新の状況にしておくという地道な努力は必要です。
これをやることにより、顧客から派遣依頼があったときに、該当するスタッフがいるかどうかはリストを見ないでも即座に答えることが出来たし、思わぬ顧客情報が入ったり、新規の依頼すら入ったりすることもありました。
この方法は、特にニッチな業界に特化した営業をする場合には必須だと思います。
それは、メーカーの営業が自社製品を説明できることと同じことなのです。
3.トラブル解決能力(企業やスタッフからの苦情対応)
人材派遣の営業は、派遣先の企業と派遣スタッフの双方からクレームを受けます。
これは、軽いものから重いものまであり、営業が全く悪くない場合も多々あります。
ここでメンタルをやられてしまう営業の方も多いです。
多くの人数を派遣していれば、この問題は日常的に発生するので、そういうものだと割り切って対応するしかありません。
この時、解決案をシミュレーションしてみて、それに従って進めていきます。
慣れてくると、トラブルが発生した段階で、その後の展開とか、あなたが話す内容までイメージできるようになります。
そのうち、自分の話に飽きてくるということもあるかもしれません。
ほとんどのトラブルはパターン化できるものだからです。
最後に
以上、人材派遣の営業のコツは真の派遣ニーズを知ることと問題解決能力であることについて書きました。
これだけでは、わかりずらいかもしれないので、実際の事例をここに追記しようと思いましたが、長くなり過ぎたので、別な記事にします。
お読みいただき、ありがとうございました。
追記:派遣ニーズを把握して提案する事例として以下の記事を描きました。
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20190131 by okkochaan