派遣社員 直接雇用 面接

最近2018年問題について書いていたら、僕にとって印象深い出来事を思い出しました。

 

それは、ある派遣社員が就業先で直接雇用になるための面接があるので、僕が面接官の役割でロープレをして貰えないかと頼まれた時のことです。

 

出来る限りその時のやり取りを再現してみようと思いますが、この質問にはこう答えるといいといったマニュアル的な内容ではありません。

 

正直言って、この話がお役に立つかどうか、あまり自信がありません。

 

ただ、ロープレ後に、そのスタッフから依頼者を通じて、非常に感謝されたので、うぬぼれやすい僕がよく覚えているのだと思います。

 

いろいろとご意見がでるところかもしれませんが、読み物として楽しんでいただければ幸いです。

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派遣スタッフの状況

スタッフは大手銀行の事務センターに数年間(7年ぐらいか)派遣勤務をしていました。

 

銀行での仕事状況はよくわかりませんが、定型的ながら根気のいる事務仕事を真面目にやってこられたのだと思います。

年齢は40代後半ぐらいの女性です。

 

一見して、真面目な人柄であることがわかりました。

 

同時に、あまり融通が利かなそうな、物事を俯瞰してみるようなことには慣れていらっしゃらないとみました。

 

その銀行では、年一回、派遣社員から契約社員への登用のチャンスがあるらしく、彼女は昨年も面接を受けたのですが、落ちてしまったとのことです。

 

さっそく本題に入ってみる

まず彼女が昨年も受けて落ちたということだったので、その辺りから聞いてみることにしました。

 

:昨年も受験なさって落ちてしまったとのことですが、あなたはその原因は何だと思いますか?

 

彼女:それが私にもよくわからないんです。

やっぱり年齢かなとか経験が薄いと思われたのかなとか考えたのですが、よくわかりません。

 

:では、今年も同じ結果になるのではないですか?

去年なにか足りないところを認識して、それを変えたとか。

2年目なので有利に働く点もあるのかもしれませんが、基本が変わらなければ難しいと思いますよ。

私は派遣先の状況を知らないので、一般的なアドバイスしかできませんが、どんな面接でも志望動機、つまり、あなたがどうして契約社員を希望するのかという質問は必ずくると思います。

その点はどう答えたのですか?

 

彼女:その質問には「安定したいから」と答えました。

派遣社員として長く勤務させていただいていますが、契約はいつ切られるかわかりません。

私もこの歳なので、新しい仕事を探すのは難しいからです。

 

:うーん。安定したいという理由は、言わない方がいいというか、NGワードに近いですよ。

たとえそれが、本当の理由だとしても逆効果にしかなりません。

面接はどんな方が出てきたんですか?

 

女性:若い男性が二人でした。

なんだか少し笑っていました。

 

:その方々は普段近くで仕事をなさっている現場の方ですか?

 

女性:いいえ。

見たことがない方でした。

 

:人事の方ですか?

 

女性:わかりません。

 

アピールポイントがないけど・・・

:お話をうかがっていると、あなたが契約社員を希望するのは、安定したいという理由以外みえてきません。

それでは、先方からみると魅力が感じられないと思うのです。

おそらく、あなたは担当されている仕事に関しては、誰よりもくわしいし、勤務も長いから自分を契約社員にすべきだと考えているかもしれません。

しかし、先方の考えは全く違うかもしれないのです。

だいたいで結構ですが、契約社員になる方の割合はどのくらいなんですか?

 

彼女:たぶん10人に1人ぐらいだと思います。

 

:うーん、微妙な割合ですね。

銀行が派遣社員から契約社員にする制度をつくっているのは、おそらく2つの意味があると思うのです。

それは、ポジティブ採用とネガティブ採用のことで、10人に1人の割合だけみるとどちらとも言えないので微妙だと思います。

ポジティブ採用とは豊臣秀吉とか織田信長のように、能力が高い人を身分にとらわれず積極的に要職につかせるということです。

リスクもありますが、能力がなければ切ればいいだけだし、能力があればリターンが大きいので、投資みたいなものです。

それこそ10人に1人、本当に利益を運んでくれれば元は取れるぐらいに考えるわけです。

 

これに対してネガティブ採用とは、派遣法など労働法とのからみで、派遣社員から社員へのルートを作り、直接雇用の努力をしていることを示すことで、努力義務として派遣法にある義務を果たしていることになるし、派遣社員の方々もモチベーションを維持できるという考えです。

企業イメージもあがるかもしれませんしね。

 

ところで、話は変わりますが、あなたは営業をやりたいと思いませんか?

 

彼女:いえ、営業はだめです。全く考えていません。

 

:前回の面接でその質問はありませんでしたか?

 

彼女:ありませんでした。

 

:では、今回は「営業でもなんでもやります!」と言ってみませんか?

 

彼女:そんな心にもないことは言えません。

 

:面接に受かるためにはそれぐらいは言わないと採用は難しいと思いますよ。

ちょっと長くなるかもしれませんが、その理由を話しますね。

 

どんな仕事もクリエイティブな発想が必要

:あなたは銀行の事務をなさっています。

もしかすると営業の仕事は人と話をするのが苦手だと、あらかじめ拒否反応があるのかもしれません。

営業は嫌だから事務をしていると自分でも思っています。

しかし、よーく考えてみてください。

会社は営業部門が直接的に会社に利益をもたらすので、当然、一番力をいれて人材を投入します。

どんな会社でも(銀行も例外ではありません)いつでも優秀な売れる営業を求めているし、事務部門に関しては必要経費と考えているので、できるかぎり効率化をし、人数を減らそうとします。

こうした努力を常にしていかなければ、会社は潰れてしまうからです。

現状維持は停滞、停滞はマイナスにしかなりません。

固定費は何もしなくても上がっていくし、ライバル会社に抜かれていってしまうからです。

 

女性:はい、そこまではわかります。

でも、それと私の採用面接がどう関係してるのかイマイチわかりません。

私は事務の仕事が好きで、この仕事を続けたいんです。

 

:営業という言葉には、広い意味があります。

この場合で言えば、クリエイティブで柔軟な発想とか対応が出来るかという意味で言っているのです。

それと、ここが重要なのですが、あなたが事務をどうとらえているかということを確認したいということなのです。

もし、あなにとって、事務が定型的な地味な仕事にすぎないのであれば、事務職という観点からだけでも社員に採用しようとは思わないかもしれません。

なぜなら、事務仕事もクリエイティブで柔軟な発想と対応を求めるからです。

特に銀行事務とか為替関係の事務などにおいて、この点は顕著です。

つまり、銀行とか証券会社とかのオペレーションの仕事にはマニュアルがないのが普通だからです。

 

彼女:マニュアルは一応あるのですが。。

 

:しかし、それはあくまで行内とか事務センター内でのマニュアルですよね?

 

彼女:はい、そうです。

 

:もしあなたが、他の銀行で同じような部署で働くとしたら、銀行としてやっていることは同じでも、その仕事配分ややり方が全く違うので驚くだろうと思います。

結局、あなたは、おそらく8割ぐらいは占める定型的な作業しかできません。

その8割の作業も、もちろん誰かがやらなければならないわけですが、その作業は交代可能な、つまり、あなたでなくてもいい誰かが出来る作業ということになります。

では、その8割の作業内容を考えることとか、残りの2割の作業は誰がこなすのでしょうか。

金融機関にオペレーションマニュアルがない場合が多いのは、マニュアルの作成よりも業務処理に変化が起こるスピードの方が速いからです。

つまり、ある時点を切り取ってマニュアル化したとしても、それが出来るころには、もはや使えなかったり修正すべき点が出たりして、事務ミスのリスクが高くなるので、マニュアルに頼れないのです。

結局、宿命的に8割の定型業務を具体化したり2割のイレギュラー対応はしなければなりません。

銀行が契約社員に求めているのは、まさにそこが出来るような人ではないでしょうか。

8割のお膳立てした業務をこなすのは、派遣社員とか機械にまかせればいいわけですから。

つまり、社員は常に業務の効率化を考えるクリエイティブな能力が必要とされるのです。

そして、それをわかりやすく聞くのに、「営業はできますか?」という質問がでる可能性があると思います。

 

彼女:なるほど。だんだんイメージ出来てきた気がします。

 

:それと、僕はある銀行の事務センターの方に聞いたことがあるのですが、それは、派遣社員は3年単位で交代させたいということでした。

その理由も明確で、派遣社員の方が処理能力のピークをむかえるのは、だいたい1年半から2年ぐらいなのだそうです。

そして2年から3年の間はその能力を維持しますが、その後は少しずつ落ちていく。

だから年功序列的に勤続年数で時給が上がるのは適当ではなく、むしろ3年を上限にしたほうがいいという話でした。

この話を聞いたときは、ずいぶんドライな方だなと思ったのですが、事務部門の責任者として経費も含めてオペレーションの質を保つ目的から考えると正しいと今では思っています。

このことから、あなたの状況を考えると、現状維持すら難しいかもしれないと思わざるを得ません。

周囲に同じような人が多いとか、変化が少なく感じるために、なんとなく契約社員にならなくても、このまましばらく続くだろうという考えは危険かもしれないのです。

もしかすると、あなたは契約社員を希望して面接する向上心の高い人と先方は思っているかもしれません。

その状況で、あなたにとって、マイナスなことは一切言ってはいけません。

営業サイドからみれば、無駄な事務をなくすことで、時間と事務ミスを減らしたり、毎日必ずあるイレギュラー処理を平然とこなしてくれることほど頼りになることはありません。

お客様が何を考えているか、どのような気持ちでいるのかまで想像できて事務処理が出来ることは、営業そのものなのです。

 

彼女:なるほど、事務にはそんな深い理由と意味があるんですね。

思ってもみませんでした。

私は気持ちのどこかで「事務をしてやっている」とか「つらいけど生活のために仕方がない」とか「こんだけやっているのに給料が安い」とか考えていたと思います。

 

:それに気づけば大きな変化が必ず訪れますよ。

面接もうまくいくに違いありません。

 

志望動機の話し方の例とマインドコントロール

彼女:では志望動機を聞かれたらどのように答えればいいでしょうか。

 

:出来ればあなたがご自分で考えて欲しいですが、特別サービスで考えてみましょう。

 

「私はこの銀行が大好きで、いつも楽しく仕事をさせてもらっています。

私の業務はほとんどが定型業務なので楽させていただいていますが、仕事をしながら、毎日、ここはこうした方が効率がいいんじゃないかとか思うことも多いです。

でも、私の仕事で助かるお客様や営業の方とかをいつも想像しながら仕事をしているので、悩んだりはしません。

もともと楽観的な性格だからだと思います。

今回、契約社員を希望した最大の理由は、これまでの定型業務にプラスして、仕事上のちょっとした工夫、特に業務効率の改善が出来るのではないかと考えたからです。

仕事の幅が広がれば、いまよりも、もっと楽しく仕事ができると確信しています。

それに、もしチャンスがあれば営業とか店頭での顧客応対とかもやってみたいです。

こんなオバサンが出てきて、お客様がびっくりして逃げてしまわなければですが。(笑)

正直、契約社員の方が安定するだろうという下心がないわけではありませんが、より良い仕事をしたいという気持ちの方がずっと強いです。

こうした理由で、今回、私は迷いなく、即決で応募させていただきました。」

 

彼女:うわっ!素晴らしすぎます。

私にこんなことが言えるでしょうか。

それに、やっぱり本心でないので気が引けます。

 

:どうしてこれがあなたの本心でないと言えるのですか?

あなたは自分と言うものをこうだとか思い込んでいるだけではないでしょうか。

何度もこれを話しているうちに、だんだんとその気になることだって、しばしばあるのですよ。

練習と面接結果

その後、上記の志望動機の言葉を何度も彼女に言わせました。

 

方法は、よく大人が子供に教えるように、僕が話した内容を彼女に復唱させるという方法を使いました。

 

:「私はこの銀行が大好きで、いつも楽しく仕事をさせてもらっています。」

 

彼女:「私はこの銀行が大好きで、いつも楽しく仕事をさせてもらっています。」

 

:もっと大きな声で、僕の顔をしっかり見て話してください。

 

彼女:「私はこの銀行が大好きで、いつも楽しく仕事をさせてもらっています。」

 

:もっと笑顔で話してください。相手が怖がったらマイナスですよ。

 

てな感じです。

 

さて、こうしたロープレを何度か繰り返して、終了しました。

 

締めの話としては、その銀行で高卒で入行し、支店長を務めている女性の話をしたり、別な外資の銀行で学歴は同じく高卒ですが、派遣から正社員になり支店長になった女性の話をして勇気づけました。

 

これらは僕も知っている方々で、事実です。

 

そして、その後、僕にロープレを頼んだ営業の方から、彼女は結果的には落ちてしまったと連絡がありました。

 

どうも、実際の面接であがってしまって、ロープレの話を一部飛ばしてしまったり控えめに話してしまったりだったそうです。

 

ただ、僕の話は目から鱗が落ちたような内容だったこと、これまで人からあのようなアドバイスをもらったことがないこと、これからの目標も出来たので頑張るとのことでした。

 

僕に依頼した営業の方によほど熱心に感謝の言葉を伝えたらしく、その営業の方の僕をみる眼も、それ以降変わりました。

 

しかし・・・・・

 

肝心の僕はかなりシャイな性格なので、飲んだ席での発言や振る舞いを翌朝起きてから後悔して、穴があったら入りたい気持になる酒飲みのような気持になりました。

 

自分は絶対に人に偉そうなことは言えないと、わが身の情けなさを思ってしまったからです。

 

なんとか、優秀な監督は必ずしも名プレイヤーではないという言葉を思い出すことで、無理に自分に納得させたのでした。

 

20181005 by okkochaan